以下、論文紹介と解説です。
Cabieses B, et al. A systematic review on the development of asthma and allergic diseases in relation to international immigration: the leading role of the environment confirmed. PloS one 2014; 9:e105347.
移住と喘息・アレルギー疾患の関連を検討した報告をまとめ、システマティックレビューを実施した。
背景
■ 喘息やアレルギー性疾患の有病率は世界的に上昇している。
■ 喘息とアレルギーの潜在的な因果関係に関するエビデンスは増加しているが、特に、アレルギー性疾患と移住のような健康の社会的決定要因との相互作用については矛盾した知見が得られている。
■ 本レビューでは、移住状況と喘息・アレルギーとの関連性についてのエビデンスを提供し、移住状況と喘息・アレルギーの発症のメカニズムを探ることを目的とした。
方法と結果
■ Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analyses(PRISMA)ステートメントで定められたガイドラインに従って、喘息やアレルギーと移住状況に関するシステマティックレビューを実施した。
■ ホスト国の集団と比較した移住者の喘息有病率のオッズ比(odds ratio; OR)は0.60(95%CI 0.45~0.84)、アレルギーのORは1.01(95%CI 0.62~1.69)だった。
■ 第1世代と第2世代の移住者における喘息の有病率のORは0.37(95%CI 0.25-0.58)だった。
■ 出身国の集団と移住した集団との比較は、その発展レベルによって異なり、先進国ほど喘息およびアレルギーの罹患率が高いことが示された。
結論
■ この知見は、喘息やアレルギー性疾患の発症には、ライフコースにおける環境が強く影響していることを示唆している。
■ 喘息の有病率は、第一世代の移民よりも第二世代の方が一般的に高くなった。
■ 移住した国での滞在期間が長くなるにつれ、喘息とアレルギー性疾患の有病率は着実に増加した。
■ これらの知見は、調査対象集団、受入国、成人だけでなく小児においても一貫している。
■ 線形モデルで検定した場合、また、移住が若い年齢と遅い年齢、居住期間が短い・長いを比較した場合にも、その差は有意であることが明らかになった。
スポンサーリンク(記事は下に続きます)
いわゆる『衛生仮説』は、日常診療にはなかなか活用し難いが、有力な仮説といえる。
■ このようなテーマの説明をすると、『では田舎に引っ越したらいいのでしょうか?』という質問を受けることがありますが、日本の国内は津々浦々が文明化されていますので、あまり影響はないように思います。
一方で、発展途上国では感染症がおおくあり、特に小児は亡くなる方が多くなります。
■ ですので、感染症や死亡率を低く抑えながら、アレルギー疾患をへらすような対策が必要でしょう。
■ これは、『衛生仮説』に繋がる話です。
■ そして、衛生仮説は日常診療に活用することはなかなか難しい理論です。
■ 以前、一般向けの記事にまとめましたので、ご参考まで…
今日のまとめ!
✅ 発展途上国から先進国に移住すると、徐々にアレルギー疾患が増加する現象がある。