以下、論文紹介と解説です。
Koplin JJ, et al. Understanding the feasibility and implications of implementing early peanut introduction for prevention of peanut allergy. J Allergy Clin Immunol 2016; 138:1131-41.e2.
HealthNuts研究コホート(5276人)において、『乳児期早期発症の湿疹および/または卵アレルギーを持つ』をハイリスク群としてスクリーニングした場合の、ピーナッツの早期導入におけるリスクを評価した。
背景
■ 最近のランダム化比較試験(Learning Early About Peanut Allergy [LEAP] study)では、ピーナッツの早期開始により、ハイリスク乳児におけるピーナッツアレルギーの有病率が低下するというエビデンスが示唆されている。
■ しかし、ピーナッツの適切な開始を用意にするためには、「ハイリスク」集団をどのように特定し、対象とするかについては疑問が残る。
目的
■ 集団ベースの乳児ピーナッツアレルギーデータを用いて、LEAP 試験介入の実施可能性と意義の理解を試みた。
方法
■ 1歳児のHealthNuts研究コホート(5276人)を用いて、ピーナッツアレルギーを発症するリスクが高い乳児を特定するためにさまざまな基準を使用した場合の影響、ピーナッツ開始前の皮膚プリックテスト(skin prick test; SPT)によるスクリーニングの意味を検証した。
結果
■ 乳児期早期発症の湿疹および/または卵アレルギーを持つすべての乳児をスクリーニングした場合、集団の16%を検査する必要がある。
■ それでもピーナッツアレルギー症例の 23%を見逃すことになり、スクリーニングされた乳児の29%は SPT陽性であるため臨床的フォローアップが必要となる。
■ ハイリスク乳児の約11%が、開始時ののピーナッツに対するSPT径が4mm以上であるためにLEAP試験から除外された。
■ HealthNuts試験のデータによると、これらの乳児の80%が食物摂取時にピーナッツアレルギーであったことが示唆されている。
さらに、この集団における16%がハイリスクとされ、そのうち14%が負荷試験によりピーナッツアレルギーと判明しています。
■ 生後 1歳時に両親が自宅でピーナッツの導入を選択した低リスクまたはハイリスクの乳児、または病院での負荷中にピーナッツアレルギーを発症した150 人の乳児のいずれにおいても、生命にかかわるようなイベントはなかった。
結論
■ この大規模な疫学研究に基づくと、ピーナッツアレルギーのリスクがあるすべての乳児を特定してスクリーニングすることを目的とした計画は、多大なコストと実際的な課題をもたらす。
■ リスクの低い乳児のデータを提供するためには、さらなる研究が必要である。
スポンサーリンク(記事は下に続きます)
『湿疹』が事前にあるとリスクが大きく上がる。リスクファクターがないのであれば…事前の検査は慎重になるべきだろう。
■ 大規模コホート試験であるHealthNuts研究コホート試験において、『乳児期早期発症の湿疹(アトピー性皮膚炎)および/または卵アレルギー』をハイリスクと考えると、14%が導入時にすでにピーナッツアレルギー、低リスク群であれば0.8%がピーナッツアレルギーとなりました。
■ 早期の湿疹がいかに重要なリスクファクターになるかがわかります。
■ 医療行為に100%はありえず、これをどのように受け取り、医療行為に結びつけ、そしてピーナッツアレルギーを予防する方策にはいるかを考える必要がありましょう。
■ この集団ではアナフィラキシーを起こした例はなく、低リスク群であれば事前の検査はかならずしも必要なく、少量からはじめていいのではというのが私の考えですが、慎重さは求められるとも思います。
今日のまとめ!
✅ ピーナッツの早期導入において、湿疹±卵アレルギーがあるハイリスク群では14%がすでにピーナッツアレルギーを発症している。低リスク群でも0.8%がすでに発症していることが予想される。