以下、論文紹介と解説です。

Amit S, et al. Early rate reductions of SARS-CoV-2 infection and COVID-19 in BNT162b2 vaccine recipients. Lancet.

新型コロナワクチン(BNT162b2)接種を受けた医療従事者 9109人のレトロスペクティブコホートを解析し、ワクチン接種群と未接種群を比較してワクチンの有効性を比較した。

背景

■ 2020年12月、イスラエル政府はBNT162b2 COVID-19ワクチンを承認し、他国と同様に医療従事者(health-care workers; HCW)を優先した全国予防接種キャンペーンを開始した。

■ HCW9647人が勤務しているイスラエル最大の病院であるSheba Medical Centreは、2020年12月19日に職員の予防接種を開始した。

■ SARS-CoV-2の既感染者を除くすべてのHCWが接種対象となった。

■ BNT162b2ワクチンの臨床試験データでは、COVID-19予防におけるワクチン1回の有効率は2回目の投与前に52~4%、2回目の投与後2~7日目に90.5%と推定されている。

 

方法

ワクチンに関連した感染率の低下を評価するために、ワクチン接種を受けたHCW 9109人のレトロスペクティブコホートを解析し、ワクチン接種群と未接種群を比較した。

■ 毎日の症状報告と即日検査により、曝露もしくは症状のあるHCWを迅速に(24時間以内に)発見し、調査することが可能となった 。

■ Sheba Medical Centreもしくは地域でSARS-CoV-2のPCRが陽性であったすべてのHCWをSARS-CoV-2感染例と定義した。

■ SARS-CoV-2に感染したすべてのHCWは、感染管理スタッフから連絡を受け、接触追跡アンケートとCOVID-19の症状に関するアンケートへの回答を求められた。

■ 症状のあるHCWはCOVID-19症例と定義した。

各HCW における、ワクチンを接種していない日数または初回投与後の日数を追跡期間とした。

■ ポアソン回帰を用いた陽性接触の確率分布を用いて、初回投与後の期間に関連する率比および95%CIを地域社会への曝露で調整した。

■ 調整後の推定値を1から減算し、率の低下を求めた。

 

結果

■ 2021年1月24日までに、対象となる9109人のうち、7214人(79%)が1回目の接種を受け、6037人(66%)が2回目の接種を受けた。

■ 完全なワクチン接種を受けたHCW 5505人(91%)は、1回目の投与後21日目または22日目に2回目の接種を受けた。

■ 6818人(95%)のHCWがSheba Medical Centreでワクチン接種を受けた。

■ 地域でワクチン接種を受けた全従業員396人は、1回目と2回目の接種日をSheba Medical Centreの人事部に報告するよう求められた。

 

■ 全体として、2020年12月19日から2021年1月24日までに、HCW 170人にSARS-CoV-2感染があり、そのうち99人(58%)のHCWが症状を報告し、COVID-19症例と診断された。

■ 感染したHCW 170人のうち、89人(52%)がワクチン未接種であり、78人(46%)が1回目の投与後に陽性となり、3人(2%)が2回目の投与後に陽性となった。

■ 追跡できた 感染例125 件ののうち、87 件(70%)は地域からの感染であり、院内感染クラスターはなかった。

ワクチン未接種の HCW の SARS-CoV-2 感染率が 1 万人日当たり 7.4人であったのに対し、ワクチンの初回接種後 1~14 日目および 15~28 日目の感染率はそれぞれ 1 万人日当たり 5.5人および1万人日当たり 3.0人だった

■ SARS-CoV-2感染率の調整後の減少率は、初回接種後1~14日目および15~28日目にそれぞれ30%(95%CI 2~50%)および75%(72%~84%)だった。

■ ワクチン未接種のHCWにおける症候性COVID-19の発病率が10000人日あたり5.0であったのに対し、ワクチン初回接種後1~14日目および15~28日目の発病率はそれぞれ10000人日あたり2.8および1.2だった。

COVID-19疾患の調整後の罹患率低下は、初回接種後1~14日目および15~28日目にそれぞれ47%(95%CI 17~66)および85%(71~92)だった。

論文から引用。今回の検討からのワクチンの有効率。

 

研究の限界・考察

■ 本研究の限界は、研究デザインに観察的性質が含まれることである。

■ コホート内に検査室サーベイランスがなかったために、無症候性症例が過小評価された可能性がある。

■ 無症候性SARS-CoV-2感染の予防におけるワクチンの有効性に関するデータは乏しく、無症候性HCWを含むSARS-CoV-2感染における感染率低下に関するこの結果は、ワクチン接種者における無症候性感染の実際の低下を確認するために、積極的なサーベイランスやワクチン接種者とワクチン未接種対照者のサンプリングを通じたさらなる検証が必要である。

HCW に見られる初回接種の感染率低下は、HCW の曝露リスクが高いこと、またはより毒性の強い株や感染株に曝露されていることにより、一般集団で報告されているワクチンの有効性とは異なる可能性がある。

 

結論

■ このデータは、初回のワクチン接種後、SARS-CoV-2感染率や症候性COVID-19感染率の早期の大幅な低下を示している。

■ COVID-19感染率の早期の低下は、ワクチン不足や資源不足に直面している国では2回目の接種を遅らせることで、1回の接種でより多くの人口をカバーできるようにすることを支持するものである。

■ 単回接種の長期的な有効性を評価するためのより長期の追跡調査は、2回目の接種を遅らせる方針をしらせるために必要である。

 

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有効性がリアルワールドで証明されてきたといえますが、『85%』をそのまま鵜呑みにせず、さらに評価を定めていく必要性はあるでしょう。

■ この研究に関しては、あくまで感染リスクの高い医療従事者に対する検討であること、そして期間が限定されていることから、実際の有効性をそのまま評価してはいないという限界はあります。

■ そのため、『85%』を額面通りに受け取れません。

■ しかし、有効性があきらかになってきたことは間違いなく、接種率を高めた国から出口戦略を考えることができるようになる可能性がみえてくるのかもしれません。

 

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今日のまとめ!

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