以下、論文紹介と解説です。

Kim JD, et al. Reduction Rate of Specific IgE Level as a Predictor of Persistent Egg Allergy in Children. Allergy Asthma Immunol Res 2019; 11:498-507.

IgE依存性卵アレルギーの児 124人が、その後寛解しにくい要因に関して検討した。

目的

■ 乳幼児に最も多い食物アレルゲンは卵である。

■ しかし、卵アレルギーの自然経過は完全には解明されていない。

■ 本研究では、小児における免疫グロブリンE(immunoglobulin E; IgE)依存性卵アレルギーにおける寛容獲得に関連する臨床的特徴を説明し、予後因子を特定することを目的とした。

 

方法

■ 2005 年 11 月から 2015 年 11 月までに、Severance Children's Hospitalにおいて 1 回以上の卵白特異的免疫グロブリン(egg white-specific immunoglobulin E; EWsIgE)検査を受けた小児を評価した。

■ 卵摂取後の即時型アレルギー反応とEWsIgE値が0.35 kU/L以上であることに基づき、IgE依存性卵アレルギーがあると診断された。

■ 卵を摂取してもアレルギー反応がないと定義した寛容獲得状況に応じ、小児を「寛容群」と「持続群」に分類した。

 

結果

■ 参加者124人のうち、101人(81.5%)で卵アレルギーが改善した。

持続群では、寛容群と比較しアトピー性皮膚炎(P = 0.039)、小麦(P = 0.009)/ピーナッツ(P = 0.012)アレルギーが多かった。

診断時のEWsIgE抗体価(EWsIgE levels at diagnosis; EWsIgEdiag)は、寛容群よりも持続群の方が高かった(P = 0.001)

論文から引用。寛解しにくい群は、卵白特異的IgE抗体価が高い。

■ 寛容群のEWsIgE抗体価の傾向は、持続群と比較して経時的に有意に低下した(P < 0.001)。

論文から引用。寛解する群は、卵白特異的IgE抗体価が低下傾向。

卵アレルギー寛容獲得の予測において、診断から12ヶ月後のEWsIgE抗体価の低下率(ΔEWsIgE12mo)は、EWsIgEdiagよりも精度が高い傾向があった(曲線下面積 0.835 vs.0.731)

■ ΔEWsIgE12moが30%以上の場合、寛容獲得は30%未満の場合よりも頻度が高かった(91.9% vs.57.9%;P<0.001)。

論文から引用。診断から12ヶ月後の卵白特異的IgE抗体価の低下率が30%以上と30%未満で予後に有意差がある。

 

結論

■ ΔEWsIgE12moは、小児におけるIgE依存性卵アレルギーの寛容獲得において独立した予測因子として使用することが可能である。

 

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さまざまな要因を考慮しながら、卵アレルギーの予後を予想しつつ、治療介入するかどうかを考える必要があるかもしれない。

■ 特異的IgE抗体価の低下傾向が、卵や乳、小麦アレルギーの予後を予想することに関しては、すでに先行研究がいくつかあります。

■ さらに、初期に卵黄負荷試験でも陽性だと、なかなか寛解しにくいのではないかといった報告もあります。

■ そして、皮膚の状態にも応じるといえます。

■ 初期の特異的IgE抗体価、負荷試験の結果、その後の低下傾向…予測する因子を確かめながら、積極的な治療を考えるかどうか考える必要があるでしょう。

 

■ ただし、初期から特異的IgE抗体価がたかいと、免疫療法のリスクも高いという問題点もあり、一筋縄ではいかないともいえるでしょう。

 

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今日のまとめ!

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