以下、論文紹介と解説です。
Ayasse M, et al. Vaccines do not cause atopic dermatitis: A systematic review and meta-analysis. Vaccine. 2021 Feb 26:S0264-410X(21)00203-6. doi: 10.1016/j.vaccine.2021.02.036. Epub ahead of print. PMID: 33648762.
予防接種がアトピー性皮膚炎の発症リスクを高めるかどうかを調査した44研究のメタアナリシスを実施した。
背景
■ 先行研究では、ワクチン接種とアトピー性皮膚炎(atopic dermatitis; AD)の発症率との関連性について、相反する結果が報告されている。
目的
■ ワクチン接種がADの可能性を高めるかどうかを調査した。
方法
■ MEDLINE、EMBASE、LILACS、Scopus、Web of Scienceデータベースに掲載されている全研究を対象にシステマティックレビューを実施した。
■ 少なくとも2名のレビュアーがタイトル/抄録、全文レビュー、データ抽出を行った。
■ エビデンスの質はNewcastle-Ottawa Scale (NOS)を用いて評価した。
結果
■ 44研究が包含基準を満たした。
■ 37研究がメタアナリシスに十分なデータを有していた。
■ ワクチンレジメンとADとの関連は認められなかった(ランダム効果ロジスティック回帰によるオッズ比[95%信頼区間]0.961[0.822-1.124]; 21研究)。
■(個別には)BCG (0.927 [0.701-1.226]; 8研究)、百日咳(0.790 [0.416-1.499];4研究)、単一ワクチン(1.031 [0.920-1.155];17研究)、複数ワクチン(0.902 [0.608-1.338];7研究)であり、これは、高品質(NOS≧7)(OR[95%CI] 0.941[0.793-1.117];13研究)もしくは低品質(NOS<7)(OR[95%CI]1.058[0.669-1.674];8研究)の研究でも同様だった。
制限事項
■ ランダム化比較試験は行われていない。
結論
■ AD発症とワクチンレジメンは一貫して関連しなかった。
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予防接種とアトピー性皮膚炎の発症には差がないとまとめられるようだ。
■ 以前から、とくにBCG接種とアレルギー疾患の関連に関してはさまざまな論争があります(Pediatr Allergy Immunol. 2002 Jun;13(3):172-6. doi: 10.1034/j.1399-3038.2002.01048.x. PMID: 12144638.)。
■ そしてBCGを接種したほうがアレルギーが少ないという文脈で論じた報告もすくなからずあります(Clin Exp Allergy. 2008 Jan;38(1):79-85. doi: 10.1111/j.1365-2222.2007.02859.x. Epub 2007 Oct 23. PMID: 17956585.)。
■ しかし今のところは、メタアナリシスを実施すると『差がない』とまとめていいようです。
今日のまとめ!
✅ BCGも含め、予防接種とアトピー性皮膚炎の発症には関連がないとまとめられるようだ。