以下、論文紹介と解説です。
Keet C, et al. Ara h 2–specific IgE is superior to whole peanut extract–based serology or skin prick test for diagnosis of peanut allergy in infancy. Journal of Allergy and Clinical Immunology 2021; 147:977-83.e2.
(1) ピーナッツの摂取歴、検査歴、反応歴がなく、(2) (a) 中等症~重症の湿疹、(b) 食物アレルギーの既往歴、および/または (c)1親等以内にピーナッツアレルギーのあるの乳児321人を対象に、ピーナッツ特異的IgE抗体価・Ara h1、Ara h2、Ara h3、Ara h8特異的IgE抗体価の陽性予測を検討した。
背景
■ 現在、米国では導入前のハイリスク乳児に対するピーナッツアレルギー(peanut allergy; PA)のスクリーニングが推奨されているが、最適なアプローチは明らかにされていない。
目的
■ ピーナッツを摂取する前の乳児のスクリーニング集団において、ピーナッツ皮膚プリックテスト(skin prick test; SPT)、ピーナッツ特異的IgE(sIgE)、ピーナッツコンポーネントsIgEの診断検査特性を比較した。
方法
■ (1) ピーナッツの摂取歴、検査歴、反応歴がなく、(2) (a) 中等症~重症の湿疹、(b) 食物アレルギーの既往歴、および/または (c) 1親等以内にPA の既往歴のある乳児を対象に、ピーナッツの SPT、ピーナッツsIgEとコンポーネントIgE 検査、SPT径に応じ、経口食物負荷試験、摂食の観察を行った。
■ Receiver-operator characteristicの曲線下面積(areas under the curve; AUC)を比較し、診断感度と特異度を算出した。
結果
■ 計321人が登録を完了し(年齢中央値 7.2ヶ月; 男性58%)、37人(11%)がPAがあることが判明した。
■ 全体として、カットオフポイントAra h 2-sIgE 0.1 kUa/L(AUC 0.96; 感度 94%; 特異度 98%)は、ピーナッツ-sIgE 0.1 kUa/L(AUC 0.89; 感度 100%; 特異度 78%)、0.35 kUa/L (AUC 0.91; 感度 97%; 特異度 86%)、または皮膚プリックテスト 3mm(AUC 0.90; 感度 92%; 特異度 88%)、径8mm(AUC 0.87; 感度 73%; 特異度 99%)と比較し、最も良好にアレルギーと非アレルギーを鑑別した。
論文から引用。ピーナッツ特異的IgE抗体価・Ara h1、Ara h2、Ara h3、Ara h8特異的IgE抗体価により、ピーナッツアレルギーの陽性予測をROC曲線で求めた。
■ Ara h 1-sIgEやAra h 3-sIgEは、Ara h 2-sIgEを含むモデルに含めてもPAの予測に付加的な影響を与えず、Ara h 8-sIgEの鑑別力は不十分だった(AUC 0.51)。
結論
■ ピーナッツ導入前にハイリスク乳児のスクリーニングを行う場合は、Ara h 2-sIgEのみの測定を検討すべきである。
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ピーナッツ導入前の乳児に対し、Ara h2特異的IgE抗体価による陽性予測は有用。ただし、『検査前確率』を忘れてはならないでしょう。
■ この研究結果をみて、『では、全員にAra h2特異的IgE抗体価をしらべればいいのでは』と考えるのは早計です。
■ あくまでこの研究に参加した児は、(1) ピーナッツの摂取歴、検査歴、反応歴がなく、(2) (a) 中等症~重症の湿疹、(b) 食物アレルギーの既往歴、および/または (c) PA の既往歴のある1親等以内の乳児を対象としているからです。
■ Discussionでも、PPV(陽性的中率)は、検査前の状態に大きく依存し、一般集団ではピーナッツアレルギーの有病率が約2%であり、中等症や重症の湿疹がない場合は、ピーナッツアレルギーのきょうだいがいても有病率は1%であるため、ピーナッツアレルギーのリスクが低い児はスクリーニングを受けるべきではないとしています。
■ すなわち、『検査前確率』を忘れてはいけないということです。
今日のまとめ!
✅ ハイリスク乳児に対し、ピーナッツ導入前のAra h2特異的IgE抗体価が、もっとも陽性予測に優れていた。