以下、論文紹介と解説です。
Miura Y, et al. Long-term follow-up of fixed low-dose oral immunotherapy for children with severe cow's milk allergy. Pediatr Allergy Immunol. 2021 Jan 3. doi: 10.1111/pai.13442. Epub ahead of print. PMID: 33393118.
牛乳3mLの経口食物負荷試験陽性である児を、3mLまで増量できたら3mLで維持し、1年後、2年後、3年後に2週間中断後に3mL、25mLで負荷試験を行った。
背景
■ 牛乳(cow's milk; CM)に対する低用量経口免疫療法(low‐dose oral immunotherapy; LOIT)の1年間の追跡調査での有効性と安全性は以前に報告された。
■ 我々は重症CMアレルギーのある児を対象に、量を固定した長期間LOITのアウトカムを検討した。
方法
■ 3mLのCMの経口食物負荷試験(oral food challenge; OFC)に陽性反応を示した児を対象とした。
■ LOIT群 33人は3 mLのCMを1年間摂取した。
3mLに達したら、ロラタジンを中止しています(Int Arch Allergy Immunol. 2015;168(2):131-7. doi: 10.1159/000442157. Epub 2015 Dec 19. PMID: 26683057.)
先行研究の論文から引用。1年後に脱感作(飲み続けていれば飲める)3mLに達しているのは75%、2週間中断後の3mLのSUに達しているのは58.3%、2週間中断後の25mLに達しているのは33.3%。
■ 2週間の CM除去後、3mL と 25mL の OFC を実施した。
■ 陽性反応を示した児は、3mL 摂取を継続し、1 年ごとに OFC を繰り返した。
■ OFCsが陰性であり、CM 25 mLを家庭で定期摂取できれば、25 mLのshort‐term unresponsiveness(25 mL STU)と定義した。
■ 3mLのOFCで陽性だったヒストリカルコントロール群16人は、CM摂取を毎日除去した。
結果
■ LOIT群の25mL STUの割合は、1年後、2年後、3年後にそれぞれ27%、52%、61%であり、3年後の率はヒストリカルコントロール群(13%)よりも有意に高かった(P = 0.002)。
論文から引用。
■ LOIT群では、重篤な症状を発症したのは1名のみだった。
■ さらに、この群では、CM-およびカゼイン特異的免疫グロブリンE(sIgE)値が3年後に有意に低下し、カゼイン特異的IgGおよびIgG4値が有意に上昇した。
■ しかし、ヒストリカルコントロール群ではこれらのパラメータに有意な変化は認められなかった。
■ 試験開始時のsIgE値は、25mLのSTUを達成した児では有意に低値だった。
結論
■ LOITの固定して継続することで免疫学的な改善が得られ、重篤なCMアレルギーにも有効で安全である可能性がある。
スポンサーリンク(記事は下に続きます)
乳アレルギーの経口免疫療法の難しさと、『あきらめずに継続すること』の重要性を示した研究結果と言えるでしょう。
■ ヒストリカルコントロール群との比較であるのが少々弱いところではありますが、3mLを摂取できるようになった群を対象に、ずっと同じ量でも維持しておくと2週間中断しても安定して摂取できるようになり、3年間継続すると2週間中断しても25mLを摂取できるようになる率6割に達するとまとめられます。
■ 『あきらめずに長く同じ量で飲むこと』で、すこしずつ安全性があがるともいえ、重要な知見ともいえます。
■ ただし、『3年間継続しても、25mL』ともいえ、3mLにも達することができない重篤な群もあります。
■ それだけ、乳アレルギーの治療は容易ではないとも言えるでしょう。
■ 乳アレルギーの治療は簡単ではないといつも感じています。
■ でも、『毎日の治療は実を結ぶかもしれない』ということができ、とてもありがたい研究結果ともいえますね。
今日のまとめ!
✅ 乳の少量定期摂取による経口免疫療法は、長く続けるほど効果が高まるようだ。