以下、論文紹介と解説です。

Zurynski Y, et al. Vitamin K deficiency bleeding in Australian infants 1993-2017: an Australian Paediatric Surveillance Unit study. Arch Dis Child. 2020 May;105(5):433-438. doi: 10.1136/archdischild-2018-316424. Epub 2019 Sep 13. PMID: 31519552.

1993年から2017年にかけてオーストラリアにおけるビタミンK欠乏性出血の調査が実施された。

目的

■ 1993年から2017年の、オーストラリアにおけるビタミンK欠乏性出血(vitamin K deficiency bleeding; VKDB)のサーベイランスを実施する。

 

方法

■ 小児科医は、生後6か月未満の乳児のVKDB例を報告し、人口統計学的、臨床的、生化学的な情報をAustralian Paediatric Surveillance Unitに提供した。

 

結果

■ 58例が報告された。

■ そのうち5例(9%)が 早期( early )11例(19%)典型的(classical)、42例(72%)が晩期(late)のVDKDBだった。

管理人注
本症は、
出生後 24 時間以内に発症する early (onset)、
24 時間を過ぎて 7 日までに発症する classical、
出生後 2 週から 6 か月までに発症する late (onset)
に大別されます。

論文から引用。出血を起こした児は、内服をしてない群に多い。

■ 53例(91%)は母乳のみで育てられていた。

■ 7例(12%)が内服による予防法を受けていたが、大部分(86%)は推奨される3回の投与のすべては受けていなかった。

■ 報告されていた全体の発症率は出生100,000人あたり0.84例(95%CI 0.64~1.08)、晩期のVKDB発症率は出生100,000人当たり0.61例(95%CI 0.44~0.82)であり、ビタミンKの筋注投与が推奨されている他国で報告されている率と同程度だった。

■ 経口投与が推奨されていた1993年から1994年3月までに、VDKDBの発生率は有意に高かった(出生10万人あたり2.46例; 95%CI 1.06~4.85)(p<0.05)。

ビタミンKは33例(57%)に投与されていなかったが,その主な理由は親の拒否であり、2006年以降、親の拒否は有意に増加していた(p<0.05)

■ 死亡例は6例で,すべて頭蓋内出血によるものだった。

管理人注
6例の死亡例が報告され、いずれもlate(晩期)VKDB頭蓋内出血によるものでした。
このうち3例は自宅で出産し※、親の拒否によりビタミンKが投与されず、母乳のみで育てられてました(うち1名は胆汁うっ滞あり=ビタミンKが不足しやすい)。
残りの3例は病院で出産し、ビタミンKの筋注投与予防を受けていましたが、2例は肝疾患が確認され(肝疾患があるとやはりビタミンKが不足しやすい)たうえ推奨された投与を受けておらず、もう1例は肝疾患なく推奨された予防を受けていましたが、母乳のみで育てられていました。
※自宅出産の方のビタミンKの拒否率は高いと論文内で述べられています。

■ そして3例は自宅出産であり親のビタミンK投与拒否に関連していた。

 

結論

■ オーストラリアにおけるVDKDBの発生率は世界で最も低いものの一つであるが、親の拒否が増加する傾向にあることが確認された。

■ VKDBを予防するためには、継続的なサーベイランスと医療従事者や親に対する教育キャンペーンが必要である。

 

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ビタミンKの推奨量の使用は、新生児期の頭蓋内出血などの出血性疾患の予防に大きな効果があります。

■ ビタミンKを使用しないことは、新生児期の出血性の疾患につながり、とくに頭蓋内出血はきわめて重篤となります(オーストラリアも医療先進国ですが、日本と同様に救命できていません)。

■ 確かに頻度は決して高くはないので、『内服しなくても大丈夫だった』『周囲では聞いたことがない』ということはありえます。

■ しかし、内服をしないことで確実にリスクもあがるといえるでしょう。

 

■ 「新生児・乳児ビタミンK欠乏性出血症に対するビタミンK製剤投与の改訂ガイドライン(修正版)」をご確認ください。

■ ご心配な方は、小児科専門医にご相談ください。

 

今日のまとめ!

 ✅ ビタミンKの内服は、新生児期の頭蓋内出血の予防に有効である。

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