以下、論文紹介と解説です。
Simpson EL, et al. Efficacy and safety of abrocitinib in adults and adolescents with moderate-to-severe atopic dermatitis (JADE MONO-1): a multicentre, double-blind, randomised, placebo-controlled, phase 3 trial. Lancet 2020; 396:255-66.
中等症から重症アトピー性皮膚炎の患者(12歳以上)387人に関し、アブロシチニブ100mg、アブロシチニブ200mg、プラセボ経口投与にランダム化し12週間の有効性と安全性を比較した。
背景
■ 経口選択的ヤヌスキナーゼ1阻害剤であるアブロシチニブは,中等症から重症アトピー性皮膚炎の成人を対象とした第2b相試験において,有効性と忍容性が確認された。
■ そこで、中等症から重症のアトピー性皮膚炎の青年および成人を対象に、アブロシチニブ単剤療法の有効性および安全性を評価することを目的とした。
方法
■ この多施設共同二重盲検無作為化第3相試験(JADE MONO-1)では、オーストラリア、カナダ、欧州、米国の69施設において、中等症から重症アトピー性皮膚炎(Investigator Global Assessmentスコアが3以上、Eczema Area and Severity Index [EASI]スコアが16以上、体表面積の罹患率が10%以上、Peak Pruritus Numerical Rating Scaleスコアが4以上)で体重が40kg以上の患者(12歳以上)が登録された。
■ 患者は、1日1回、12週間にわたり、アブロシチニブ100mg、アブロシチニブ200mg、プラセボ経口投与にランダム化された(2:2:1)。
論文から引用。研究フローチャート。
■ ランダム化は、インタラクティブな応答技術システムを用いて行われ、試験開始時の疾患の重症度と年齢で層別された。
■ 患者、治験責任医師、本試験の資金提供者は、試験の治療法についてマスキングされた。
■ 主要評価項目は、Investigator Global Assessmentによる有効性(試験開始時から2段階以上改善し、スコアが0(軽快)または1(ほぼ軽快))を達成した患者の割合と、EASIスコアが試験開始から75%以上改善した患者の割合(EASI-75)であり、いずれも12週目に評価した。
■ 有効性は、少なくとも1回の治験薬投与を受けた、ランダム化されたすべての患者を含むfull analysis セットで評価された。
■ 安全性は、ランダム化されたすべての患者で評価された。
■ 本試験はClinicalTrials.gov(NCT03349060)に登録されている。
調査結果
■ 2017年12月7日から2019年3月26日に、患者387人が登録された。
■ 156人をアブロシチニブ100mgに、154人をアブロシチニブ200mgに、77人をプラセボに割り付けた。
■ 登録されたすべての患者は、少なくとも1回の試験治療を受けたため、12週間の有効性を評価することが可能だった。
■ 12週目に主要評価項目のデータが得られた患者のうち、Investigator Global Assessmentによる有効性が確認された患者の割合は、プラセボ群に比べてアブロシチニブ100mg群で有意に高く(156人中37人[24%] vs 76人中6人[8%]; p=0.0037)、アブロシチニブ200mg群ではプラセボ群に比べて有意に高かった(153人中67人[44%] vs 76人中6人[8%]; p<0.0001)。
論文から引用。
■ 12週目に主要評価項目のデータが得られた患者のうち、EASI-75が得られた患者の割合は、プラセボ群と比較して、アブロシチニブ100mg群(156人中62人[40%] vs 76人中9人[12%]; p<0.0001)、アブロシチニブ200mg群(153人中96人[63%] vs 76人中9人[12%]; p<0.0001)で有意に高かった。
論文から引用。
論文から引用。
■ 有害事象は、アブロシチニブ100mg群156人中108人(69%)、アブロシチニブ200mg群154人中120人(78%)、プラセボ群77人中44人(57%)で報告された。
■ 重篤な有害事象は、アブロシチニブ100mg群では156人中5人(3%)、アブロシチニブ200mg群では154人中5人(3%)、プラセボ群では77人中3人(4%)に報告された。
■ 治療に関連した死亡例は報告されなかった。
解釈
■ 中等症から重症アトピー性皮膚炎の青年期/成人期の患者において、1日1回のアブロシチニブの経口投与による単剤療法は有効であり、良好な忍容性を示した。
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JAK阻害薬に関しては、さまざまな薬剤が臨床試験中です。今後コストの低減も期待されます。
■ JAK阻害薬に関しては、Abrocitinibだけでなく、Ruxolitinib、Baricitinib、Tofacitinib、Upadacitinib、Delgocitinibと、さまざまな薬剤が開発中です(Am J Clin Dermatol 2020; 21:601-18.)
■ そしてアブロシチニブに関しては、そう痒症の重症度の低下(2週間のPeak Pruritus NRSが4ポイント以上低下)がデュピルマブより有効だったという報告があります。
■ まだ内服のJAK阻害薬が臨床応用できているわけではないのですが、個人的には、コストの低減がどうしても限定的な生物学的製剤に比較すると、低分子薬であるJAK阻害薬はコストの低減を期待しています。
今日のまとめ!
✅ 内服のJAK阻害薬Abrocitinibによる効果が、12歳以降のフェーズII試験として報告された。