以下、論文紹介と解説です。
Patrick MT, et al. Associations between COVID-19 and skin conditions identified through epidemiology and genomic studies. Journal of Allergy and Clinical Immunology 2021; 147:857-69.e7.
9種類の炎症性皮膚疾患と新型コロナウイルスによる重症急性呼吸器症候群に感染した気管支上皮細胞株の遺伝子発現を比較し、ゲノムワイド関連研究によってCOVID-19に対する感受性と2種類の皮膚疾患(乾癬とアトピー性皮膚炎)における疾患横断的なメタ解析を行った。
背景
■ 新型コロナウイルス感染症(Coronavirus disease 2019; COVID-19)は、皮膚症状を一般的に伴っており、また、既存の皮膚疾患を悪化させることもあるが、COVID-19と皮膚疾患との関係はまだ明らかになっていない。
目的
■ COVID-19と皮膚疾患との関係について、マルチオミクス手法を用いて検討し、皮膚疾患のある患者がCOVID-19の影響を受けやすいかどうかを確認することを目的とした。
方法
■ 疫学調査を行い、9種類の炎症性皮膚疾患とコロナウイルスによる重症急性呼吸器症候群に感染した気管支上皮細胞株の遺伝子発現を比較し、COVID-19感受性と2つの皮膚疾患(乾癬とアトピー性皮膚炎)におけるゲノムワイド関連研究による疾患横断的なメタ解析を行った。
結果
■ 乾癬とアトピー性皮膚炎を含む皮膚疾患は、COVID-19のリスクを増加させるが(オッズ比 1.55; P = 1.4 × 10-9)、機械的な呼吸器のリスクを減少させた(オッズ比 0.22; P = 8.5 × 10-5)。
■ 感染した正常な気管支上皮細胞と、乾癬やアトピー性皮膚炎などの炎症性皮膚疾患には、遺伝子発現に大きな重複を観察した。
■ コロナウイルス2による重症急性呼吸器症候群の感染と皮膚疾患の両方で共通して誘導される遺伝子については、表皮分化複合体に位置するS100ファミリーが4つあり、さらに「IL-17シグナル伝達経路」(P = 4.9 × 10-77)を最も有意に賦活化する経路の1つとして特定された。
■ さらに、乾癬とコロナウイルス2による重症急性呼吸器症候群感染症には、表皮分化複合体に共通する、ゲノムワイドによる有意な遺伝子座が特定され、
■ リードマーカーはS100A12の量的発現形質遺伝子座だった(P = 3.3 × 10-7)。
結論
■ 以上の結果から、炎症性皮膚疾患におけるCOVID-19の発症リスクは高いが、重症度は低いことが示唆され、また、抗COVID-19免疫反応に関与する共通成分が明らかになった。
スポンサーリンク(記事は下に続きます)
メカニズムは十分わかっていないようだが…
■ さまざまな考察がおこなわれていましたが、(ちょっと読み込みが甘いからという理由もあるのですが)メカニズムははっきりわからないとまとめざるを得ないように思います。
■ その中での考察のひとつとして、コロナウイルスはいわゆるSARS-Cov2だけでなく、『旧型』コロナもおり、それらのコロナウイルスへの感染歴が新型コロナへのリスクを軽減する可能性は示唆されています。
■ つまり、粘膜バリアの破壊によりコロナウイルスを含む様々な感染症を助長し、その結果としてCOVID-19に対する感受性が高まる可能性がある一方で、ある程度の免疫力が得られる…、そしてインターフェロン反応を速め、COVID-19をより効果的にコントロールできるようになる…といったメカニズムも考察されていました。
■ でも…、それは感染しやすくて、過去も感染歴がおおいということですよねえ…。
■ 結局は皮膚の状態を良くしておくに越したことはないように思われました。
今日のまとめ!
✅ アトピー性皮膚炎や乾癬は、新型コロナに感染しやすくなるが、重篤化は少ないかもしれない。