以下、論文紹介と解説です。

Ito K, et al. The impact of budesonide inhalation suspension for asthma hospitalization: In terms of length of stay, recovery time from symptoms, and hospitalization costs. Allergology International 2020; 69:571-7.

重症の喘息増悪により入院した成人患者98人(プロカテロールにBISを併用して治療した患者は24人)に対し、入院期間、症状(喘鳴)からの回復期間、入院費用をレトロスペクティブに比較した。

背景

■ 入院は喘息における医療費支出の主な原因である。

ブデソニド吸入懸濁液(Budesonide inhalation suspension; BIS)は,重症の喘息増悪時に喘息関連症状の軽減を助ける可能性がある。

■ しかし、入院患者に対するBISの有効性はあまり知られていない。

■ 本研究の目的は、BISと喘息による入院との関連を明らかにすることである。

 

方法

■ 2014年4月から2019年1月までに重症の喘息増悪により当院に入院した患者98人(プロカテロールにBISを併用して治療した患者24人)をレトロスペクティブに解析した。

■ 入院期間、症状(喘鳴)からの回復期間、入院費用を、BISの使用状況や呼吸器感染症の徴候(CRP、痰の有無、抗生物質の使用など)を含む臨床要因に応じて2群間で比較した。

■ 多変量ロジスティック回帰分析を行い、入院転帰に寄与する要因を調べた。

 

結果

BISの使用は、入院期間の短縮、症状の回復時間の短縮、入院費用の削減と関連していた(6.0日 vs 8.5日; 2.5日 vs 5.0日; 258,260円 vs 343,350円)

論文より引用。BIS吸入群のほうが、入院期間、改善までの期間、入院コストに有利。

■ また、呼吸器感染症の徴候も入院成績と関連していた。

■ 多変量回帰分析では、BISの使用は入院期間の短縮、呼吸器感染症の徴候に伴う喘息の入院症状と医療費の削減の要因となった。

 

結論

■ BISは、呼吸器感染症の有無にかかわらず、入院期間の短縮と症状、医療費の削減に貢献する可能性がある。

 

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入院中の気管支拡張薬のネブライザー吸入の方法に、参考になる結果かもしれません。

■ レトロスペクティブな検討であるため結論をいそいではいけないかもしれませんが、SABAにパルミコート懸濁液(BIS)を併用したほうが効果が高いことが示されています。

■ もちろん生理食塩水よりもBISの方が薬剤コストは高いのですが、症状もはやく改善し入院期間が短くなることで、トータルの入院費用も削減されるならば、よりいいと言って良さそうです。

■ ただし、この検討は三次病院による結果なので、すべての病院にはあてはまらないかもしれないともされていました。

 

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今日のまとめ!

 ✅ 成人の喘息発作での入院中のネブライザー吸入は、気管支拡張薬にパルミコート懸濁液を追加したほうが有用かもしれない。

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