以下、論文紹介と解説です。

Bosslet GT, et al. The effect of in-person primary and secondary school instruction on county-level SARS-CoV-2 spread in Indiana. medRxiv 2021:2021.03.17.21250449.

インディアナ州の92郡のうち73郡を対象に、対面授業に戻った生徒の割合と、郡レベルでの人口10万人当たりの1日の新規SARS-CoV-2感染者数の関係を調査した。

背景

■ インディアナ州の小中学校の再開が、1日のSARS-CoV-2感染者数に与える群レベルの影響を明らかにする。

 

方法

■ 本研究は、地域全体における1日の新規SARS-CoV-2例との関連性を評価するために、対面式学習の割合のパネルデータにおける回帰分析を用いた郡レベルの人口ベースの研究である。

■ 研究期間は2020年7月12日~10月6日だった。

■ インディアナ州の92郡のうち73郡(79.3%)を解析対象とし、州全体の学校法人85.7%、入学者数90.6%を占めた。

■ 主な調査対象は、対面授業に戻った生徒の割合だった。

■ プライマリアウトカムは、郡レベルでの人口10万人当たりの1日の新規SARS-CoV-2感染者数だった。

 

結果

■ 幼稚園から高校までの学校に直接通う生徒の割合と、28日後の郡レベルのSARS-CoV-2の1日あたりの症例数には、統計的に有意な相関があった。

■ 全年齢において、注目すべき係数(β)は3.36(95%CI 1.91-4.81; p<0.001)と推定された。

論文から引用。調査対象郡における1日あたりの新規SARS-CoV-2感染者数の平均数。

■ この係数は、28日後の1日あたりの新規感染者数に対し、出席率の変化が影響していることを示している。

■ 例えばK-12 studentが直接登校する割合が 10 パーセント増加すると、その郡の SARS-CoV-2 感染者数は 1 日あたり 0.336 人(全年齢層の住民 100,000 人)増加すると推定された。

管理人注
K-12(ケースルートゥエルブ、kay-through-twelve)あるいはK12(ケートゥエルブ)は、「幼稚園(KindergartenのK)から始まり高等学校を卒業するまでの13年間の教育期間」のことだそうです(Wikipedia)。

 

結論

■ 小中学校への直接の登校は、SARS-CoV-2感染の拡大に対し、統計的には有意な増加をするものの、比較的少ない増加しかもたらさなかった。

 

スポンサーリンク(記事は下に続きます)



 

変異株が増えている中、おなじ結果にはならないかもしれないが…

■ 最近のBMJの報告でも、学校での拡散はそれほどではないのではないかという結果もあります(BMJ 2021; 372:n616.)。

■ この研究でも、マスクやソーシャルディスタンスで、コミュニティ全体での感染は予想ほど促進していない可能性があると結ばれています。

■ 一方で、学級閉鎖に関しては、さまざまな結果が導かれており、有効という結果もあります(Nat Hum Behav 2020; 4:1303-12.)。

■ 現状では、むずかしいバランスを考えながら学校に関しての対応を講じていく必要があるでしょう。

 

今日のまとめ!

 ✅ 学級閉鎖からの対面授業再開は、新型コロナの拡大に寄与はするものの、その影響は大きくないかもしれない。

このブログは、私の普段の勉強の備忘録やメモであり、基本的に医療者向けです。

知識の共有を目的に発表しておりますが、追加して述べる管理人の意見はあくまでも個人としての私見です。所属するいかなる団体の立場も代表するものではありませんし、すべての方に向いているという情報でもありません。予めご了承いただきたく存じます。

このブログの『リンク』は構いません。しかし、文章やアイデアを盗用・剽窃・不適切な引用したり、許可なくメディア(動画を含む)に寄稿することはご遠慮ください。クローズドな場での勉強会などに使用していただくことは構いません。
Instagram:2ヶ月で10000フォロワーを超えました!!!

Xでフォローしよう