以下、論文紹介と解説です。
Steiman CA, et al. Patterns of farm exposure are associated with reduced incidence of atopic dermatitis in early life. J Allergy Clin Immunol 2020; 146:1379-86.e6.
WISC出生コホート研究に登録された農家111家族と非農家129家族を対象に、環境状況と生後24ヶ月までのアトピー性皮膚炎の発症リスクを評価した。
背景
■ 農場における曝露は、小児のアトピー性皮膚炎(atopic dermatitis; AD)のリスクを低下させる可能性があるが、これには議論があり、米国でのデータは限られている。
目的
■ この研究では、ウィスコンシン州の家族経営農場において、乳児期のアトピー性皮膚炎の発症率と有病率を変化させる農場曝露のパターンを明らかにすることを目的とした。
方法
■ Wisconsin Infant Study Cohort出生コホート研究に登録された農家111家族と非農家129家族を対象に、環境曝露、健康歴、臨床経過を前向きに記録した。
■ 出生前と出生早期(2カ月)の訪問時に得られた環境曝露は、生後24ヶ月までに医療機関でADの診断を受けたという親の報告と合わせて評価した。
■ 出生前と出生後早期の農場における曝露変数を用いて潜在クラス分析を行い、農場の小児を3つにクラス分類した。
結果
■ 全体として、農家の児はAD発症率が低かった(P = 0.03)。
■ 農家では、家禽(3% vs 28%; P = 0.003)、豚(4% vs 25%; P = 0.04)、飼料用穀物(13% vs 34%; P = 0.02)、動物の種類の数への曝露が、AD発症率と逆相関していた。
■ 潜在的クラスでは、農場での曝露が多様であるか、より強く暴露された家庭の児(クラスAおよびB)は、AD発症率が減少したが、曝露が少ない(クラスC)乳児は、非農場の児とAD発症率が同程度だった。
クラスAは、農家の21%を占め、出生前および乳児期にさまざまな種類の農場の動物と接触していたこと、室内犬と屋外犬に高い確率で接していた。
クラスBは、農家の半数強(104人中54人)を占め、牛や農作物との接触が多く、猫の飼育率が高かった。
クラスCは、農家の27%(104人中28人)を含み、母親が農場の動物、農場の動物の飼料(サイレージ、飼料用穀物)、寝床の敷料(干し草、わら)、糞尿と接触する割合が最も低く、ペットの飼育率も低かった。
論文から引用。グラフィカルアブストラクト。
結論
■ ウィスコンシン州の農家の乳児は、AD発症率が低く、そして、農場における曝露パターンは、ADのリスクをよりはっきりさせた。
■ これらの知見は、出生前や乳児期に多様な農場の動物、飼料、寝床にさらされることで、他の複数のアトピー性疾患と関連するフェのタイプである早期発症のADのリスクが低下することを示唆している。
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衛生仮説を、アレルギー疾患予防策として一般化させるのは難しい。
■ 原著では、それぞれのリスクがカプランマイヤー曲線でわかりやすく提示されていましたが、フリーの図ではないのでここでは示しません。
■ 結局は、衛生仮説が成立するのはエンドトキシンへの長期・慢性的な曝露が必要なのだろうと思われます。
■ 一般的には難しい曝露になりますし、アレルギー疾患の予防策としては活用しにくいといえましょう。
今日のまとめ!
✅ 農場で育った乳児のほうが、アトピー性皮膚炎の発症リスクが低くなるが、あくまでその曝露が強く、多様であるほど発症リスクが下がり、曝露の程度が少なければ効果は低くなるようだ。