以下、論文紹介と解説です。
Lin J, et al. Risk factors for postural tachycardia syndrome in children and adolescents. PLoS One 2014; 9:e113625.
7~18歳の小児・青年の600人に起立試験などで体位性頻脈症候群41人を診断し、危険因子を検証した。
背景
■ 体位性頻脈症候群(Postural tachycardia syndrome; POTS)は、子どもや青年に多く見られ、健康に大きな影響を及ぼす。
■ しかし、その危険因子は十分に解明されていない。
■ 本研究では、体位性頻脈症候群のある小児や青年に考えられる危険因子を調査することを目的とした。
方法と結果
■ 7~18歳(11.9±3.0)の小児・青年600人(男児 259人、女児 341人)を対象とし、その危険因子を明らかにした。
■ また、7歳から18歳(11.3±2.3)の197人をバリデーション群として登録した。
■ 心拍数(Heart rate; HR)と血圧(blood pressure; BP)は、起立試験中にモニターされた。
■ 危険因子を分析し、体位性頻脈症候群を予測するための感度と特異度を、ROC曲線(receiver operating characteristic curve)を用いて検証した。
■ 600人の被験者のうち、41人(6.8%)が臨床症状と直立試験に基づいて体位性頻脈症候群と診断された。
■ その結果、1日の水分摂取量、1日の睡眠時間、仰臥位HR、HR増加量、起立試験時の最大HRに、体位性頻脈症候群の児と非発症児に有意差が認められた(P<0.05)。
■ 体位性頻脈症候群の可能性は、仰臥位HRが10拍/分増加すると1.583倍(95%CI 1.184~2.116; P<0.01)、水分摂取量が800ml/日未満で3.877倍(95%CI 1.937~7.760; P<0.001)、睡眠時間が8時間/日未満だと5.905倍(95%CI 2.972~11.733; P<0.001)に増加すると考えられた。
■ 仰臥位HR、1日の水分摂取量、睡眠時間は、AUC 83.9%(95%CI:78.6%~89.1%)、感度80.5%、特異度75%で、小児や青年の体位性頻脈症候群を予測した。
■ さらに、バリデーション群では、予測感度は73.3%、特異度は72.5%だった。
結論
■ 体位性頻脈症候群の危険因子として、より高い仰臥位HR、水分摂取量の少なさ、睡眠時間の短さが挙げられた。
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体位性頻脈症候群に対しては、水分摂取の励行や睡眠障害への対策が生活指導の中心になるかもしれない。
■ 水分摂取に関しては十分にご家族におつたえしないと、『水分を取るくらいでよくならないだろう』と軽く受け取られる場合が多くなるように感じます。
■ しかし、水分摂取は薬物療法と同様にとても重要な対応方法といえます。
■ 睡眠障害に対してはまた、対応が簡単ではない症状ですが、個人的には漢方薬を中心に、適応があればメラトニンを併用することが増えてきました。
■ そして起立性調節障害に対しては、スモールステップを焦らずに上っていくことをご家族と医療者も共有しながらすこしでも良くなったことをともに喜んでいくこと、そのような支持的な対応を続けていくことも重要なのではないかと思っています。
今日のまとめ!
✅ 体位性頻脈症候群は、水分摂取が800ml/日未満、睡眠時間 8時間未満のリスク因子が大きい。