以下、論文紹介と解説です。
Inuo C, et al. Oral immunotherapy using partially hydrolyzed formula for cow’s milk protein allergy: A randomized, controlled trial. International archives of allergy and immunology 2018; 177:259-68.
乳20mL以下で症状のある25人(1歳から9歳)を、1)部分加水分解乳(Eあかちゃん)のみ摂取群と2)加水分解乳(MA-mi)→部分加水分解乳(E赤ちゃん)摂取群にランダム化し、摂取できる乳の閾値量を比較した。
背景
■ 部分加水分解乳ベースの粉ミルク(Partially hydrolyzed cow’s milk protein-based formula; pHF)は、低アレルゲン性である。
■ そこで、乳蛋白アレルギー(cow’s milk protein allergy; CMPA)の児に対しpHFを用いた経口免疫療法の安全性と有効性を検討する。
目的
■ CMPA児に対するpHFの経口免疫療法の有効性と安全性を評価するために、ランダム化二重盲検対照単施設試験を実施した。
方法
■ 参加者は、二重盲検法によるpHF-pHF群と、広範囲に加水分解された乳粉ミルク(extensively hydrolyzed cow’s milk protein-based formula; eHF)とpHF群にランダム化した。
■ このフェーズで、pHF-pHF群はpHFを、eHF-pHF群はeHFを摂取した。
論文から引用。試験デザイン。
■ オープンフェーズでは、すべての被験者hapHPを摂取した。主要評価項目は、試験開始時と第1フェーズ終了時の閾値の変化だった。
■ 副次的評価項目は、試験開始時と第フェーズ終了時の閾値の変化、カゼイン特異的免疫グロブリン(Ig)E、IgG4、好塩基球活性化だった。
結果
■ 1歳から9歳までの25人が、pHF-pHF群とeHF-pHF群にランダム化された。
■ 試験開始時から第1フェーズ終了までの閾値は、pHF-pHF群で有意に上昇した(p = 0.048)が、eHF-pHF群では上昇しなかった。
論文から引用。摂取閾値は、Eあかちゃん群でのみ上昇した。
■ 他のフェーズ間の閾値は、どちらのグループでも有意に変化しなかった。
■ カゼイン特異的IgE抗体価は、eHF-pHF群において、試験開始から第2フェーズまでに有意な減少が見られた(p = 0.014)。
論文から引用。血液検査結果の経過。
■ 試験中に、アドレナリンや全身性ステロイドを必要とする全身性アレルギー反応を起こした参加者はいなかった。
結論
■ 本試験の結果から、CMPA患者において、eHFよりもpHFを摂取した方が、牛乳に対する耐性が安全に増強される可能性が示唆された。
スポンサーリンク(記事は下に続きます)
Eあかちゃんは、『乳アレルゲン性を残している』ミルクでもあり、『摂取できているならばそのまま摂取』が勧められますし、一方で開始時は注意する必要性がある。
■ 個人的には部分加水分解乳(この場合ペプチドミルクであるEあかちゃん)の経口摂取は、経口免疫療法としての有効性があると考えており、それを裏付ける結果です。
■ Eあかちゃんが摂取できている乳アレルギーのお子さんは、継続して摂取しておいたほうが良いと言えるでしょう。
■ ただし、この研究ではEあかちゃんを20mL未満の量しか摂取していないこと、16週間とやや短い研究機関であることが限界として考察されています。
■ また、加水分解乳でまったく効果がないともいえず(これも論文でも言及されています)、そのような研究結果も報告されています。
■ 一方で、Eあかちゃんは『アレルゲン性を残している』ミルクでもありリスクもあるため、開始時は慎重に導入するべきですし、乳への移行に注意しながら進めていく必要もあります。
■ 自己判断でEあかちゃんを飲ませるのではなく、専門医によく相談しながら進めていく必要性があるでしょう。
今日のまとめ!
✅ 部分加水分解乳(ペプチドミルク)であるEあかちゃんは、経口免疫療法として有効かもしれない。