以下、論文紹介と解説です。
Cork MJ, et al. Dupilumab provides favourable long-term safety and efficacy in children aged ≥ 6 to < 12 years with uncontrolled severe atopic dermatitis: results from an open-label phase IIa study and subsequent phase III open-label extension study. Br J Dermatol. 2021 May;184(5):857-870. doi: 10.1111/bjd.19460. Epub 2020 Oct 9. PMID: 32969489.
重症のアトピー性皮膚炎患児(6歳以上~12歳未満)に対し、デュピルマブ2mgもしくは4mg/kgを単回投与した後、8週間の薬物動態調査を実施、その後、2mgもしくは4mg/kgを週1回4週間投与し(第IIa相)、さらにその後、同様に週1回投与し、その有効性と安全性を評価した。
背景
■ 6歳以上12歳未満の重症アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis; AD)の児は、治療選択肢が限られている。
■ 小児を対象とした16週間のランダム化プラセボ対照第III相試験において、インターロイキン(IL)-4/IL-13シグナルを阻害するモノクローナル抗体であるデュピルマブは、忍容性のある安全性で症状を有意に改善したが、より長期の安全性および有効性に関するデータは不足している。
目的
■ 重症のAD患児(6歳以上~12歳未満)を対象としたデュピルマブの薬物動態プロファイルおよび長期的な安全性と有効性を報告する。
方法
■ 重症AD患児(6歳以上~12歳未満)を対象に、多施設共同、第IIa相、非盲検、用量漸増、連続コホート試験およびその後の非盲検延長試験を実施した。
■ 患者は、デュピルマブ2mgもしくは4mg/kgを単回投与した後、8週間の薬物動態サンプリングを行い、その後、2mgもしくは4mg/kgを週1回、4週間投与し(第IIa相)、その後、週1回のレジメンで治療を継続した(open-label extension; OLE)。
論文より引用。試験プロトコル。
■ 主要評価項目は、デュピルマブの濃度時間プロファイルと治療に起因する有害事象(treatment-emergent adverse events; TEAE)であり、副次評価項目は、EASI(Eczema Area and Severity Index)とPP-NRS(Peak Pruritus Numeric Rating Scale)スコアだった。
結果
■ 登録された38人のうち、37人が第IIa相試験を完了し、33人がOLEまで継続して投与された。
■ デュピルマブの濃度は,非線形にターゲット濃度に調整される薬物動態により特徴づけられた(24~48 週目の平均血清濃度: 2 mg/kg; 61~77 mg/L; 4 mg /kg; 143~181 mg/L)
■ TEAEの多くは軽症から中等症で一過性のものであり、治療を中止するに至ったものはなかった。
■ 最も多く報告されたTEAEは鼻咽頭炎(2 mg/kg; 47%; 4 mg/kg; 56%)とADの悪化(それぞれ29%と13%)だった。
■ 単回投与されたデュピルマブは、急速にADを改善し52週目までさらに改善した。
■ EASI と PP-NRS の平均値は、第2週(第IIa相)にはそれぞれ -37%/-33%、-17%/-20%となり、第52週(OLE)にはそれぞれ -92%/-84%、-70%/-58%に改善した。
論文より引用。有効性の評価。
(a)第IIa相試験の試験開始時から第III相OLEの52週目までのEASIの変化率。
(b)第IIa相試験の試験開始時から第III相OLEの52週目までにEASI 75を達成した患者の率。
(c) 第IIa相試験の試験開始時から第III相OLEの52週目までにIGAスコアが0または1になった患者の率。
(d) 第IIa相試験の試験開始時から第III相OLEの52週目までのPP-NRSの変化率。
結論
■ これらの安全性および有効性の結果は、6歳以上~12歳未満の重症AD患児に対するデュピルマブの長期継続投与を支持するものである。
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高価な薬を使うことが目的ではないものの、一部の重症アトピー性皮膚炎のお子さんへの治療選択肢が広がることが望まれます。
■ もちろん、デュピルマブは高価な生物学的製剤です。
■ 最近薬価が改定されてすこし下がったものの、1本66356円であり、3割負担で初月2回投与するとすると、最初の月が6万円くらい、維持期に入ると4万円弱が毎月かかることになるそうです。
■ もちろんスキンケア中心で安定すれば不要になってくる薬剤ですし、そこまでの橋渡しの薬剤と考えるべきですが、小児でも小学校くらいからステロイド外用薬やタクロリムス外用薬で着地できない方が、ごく少数ながらいらっしゃいます。
■ このような薬剤が小児でも徐々に使えるようになってくればと思っています。
今日のまとめ!
✅ 6歳から12歳の重症アトピー性皮膚炎に対する、デュピルマブの52週間の有効性・安全性に関する試験が報告された。