以下、論文紹介と解説です。

Maeda M, et al. Effect of oral immunotherapy in children with milk allergy: The ORIMA study. Allergol Int 2021; 70:223-8.

10mL以下の牛乳でアレルギー症状が誘発される小児(3~12歳)28人に対し、緩徐免疫療法で100mLまで増量させる介入群、完全除去群にランダム化し、1年後に乳100mLの経口負荷試験のクリア率を比較した。

背景

■ 本研究は、重症の牛乳アレルギー児を対象に、経口免疫療法(oral immunotherapy; OIT)の有効性と安全性を評価することを目的とした。

 

方法

■ 対象は、経口食物負荷試験(oral food challenge test; OFC)において10mL以下の牛乳でアレルギー症状が誘発された小児(3~12歳)28人である。

■ 被験者を治療群14人と対照群14人にランダム化し、前者には2週間の急速免疫療法を実施し、1年間かけて牛乳の量を100 mLまで漸増させ、後者には1年間牛乳を完全除去した。

■ 両群とも1年後に100mLの牛乳でOFCを実施した。

研究デザイン。

 

結果

介入群では、OFCの陰性率が対照群に比較して有意に高かった[7/14(50%) vs 0/14(0%); p < 0.01]

論文から引用。介入群では50%が100mLを摂取可能となったが、完全除去群で達成した例はいなかった。

 

■ 牛乳特異的IgE抗体価は、治療群では有意に低下したが(p<0.01)、対照群では低下しなかった(p=0.63)。

試験期間中にアドレナリンが必要となったのは、治療群では6/14例(43%)、対照群では0/14例(0%)だった

論文より引用。介入群のほうが中等症以上の有害事象が多い。

■ 治療群の8人について、試験後2年時点での長期追跡調査データが得られ、このうち7人(87.5%)は牛乳(100mL以上)の摂取を継続していた。

論文より引用。2年後の摂取量と試験開始後からの乳特異的IgE抗体価の経過。

 

結論

■ 免疫療法の効果は50%だったが、有害事象の発生率は低くなかった。

■ 牛乳アレルギーに対するOITを標準化するためには,安全性に焦点を当てたさらなる研究が必要である。

 

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少量の乳が摂取できずに年齢が長じると、乳アレルギーに対する経口免疫療法はけっして容易ではなく、リスクも低くない。

■ 乳アレルギーは、なかなか治療が難しく、リスクも低くないことが指摘されます。

■ 現状として、これは、という方法ははっきり言えないのですが、『少量で維持し、長期間継続する』『ペプチドミルクを使用する』『オマリズマブを併用する』などが試みられています。

■ 乳のリスクが高いことに関して理由はわかっていませんが、事前の皮膚の状態にも応じるのではないかなと個人的には考えています。すなわち、皮膚の治療を並行して行う必要性がとくに高い相手なのかもしれません。

■ もちろん、経口免疫療法は、専門医の指導をうけながら実施するべき治療で、標準治療ではありません。

 

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今日のまとめ!

 ✅ 少量の乳で有症状のまま年齢が長じた場合の乳経口免疫療法は、効果はあるもののリスクが高いといえる。

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