以下、論文紹介と解説です。
Bosma AL, et al. Work ability and quality of working life in atopic dermatitis patients treated with dupilumab. J Dermatol. 2021 May 19. doi: 10.1111/1346-8138.15939. Epub ahead of print. PMID: 34013539.
中等症以上の成人アトピー性皮膚炎患者 93人に対してデュピルマブを使用して、48週間で作業能力や作業生活の質が改善するかを前向きに評価した。
背景
■ アトピー性皮膚炎は、仕事の生産性低下を伴う。
■ 患者が自分の労働能力や労働生活の質をどのように認識しているのか、また、それが治療によってどのように影響されるのかについては、ほとんど知られていない。
目的・方法
■ この研究の主な目的は、ベースライン時と治療期間中の作業能力と作業生活の質を長期的に調査することだった。
■ 日常診療でデュピルマブの投与を開始したアトピー性皮膚炎患者を対象に、登録した前向き観察コホート研究を実施した。
■ 使用した評価指標は、作業能力指数(Work Ability Index; WAI:質問1、2、3)と作業生活の質に関するアンケート(Quality of Working Life Questionnaire; QWLQ)だった。
結果
■ 対象となった患者は93人であり、そのうち72人(77%)が自営業者だった。
■ ベースラインから48週目までに、WAI-1スコア(一般作業能力; 範囲0~10)の平均値は6.8(±2.0)から7.9(±1.3)に、WAI-2(身体作業能力; 範囲1~5)は3. 7(±0.9)から4.3(±0.7)に、WAI-3(精神・情緒的作業能力; 範囲1~5)は3.4(±0.9)から3.9(±0.8)に改善した(それぞれ、p = 0.001; p = 0.005; p < 0.001)。
論文から引用。WAIの変化。
■ QWLQ総合スコアの平均値は74.0(±9.1)から77.5(±9.6)に、サブスケールの「健康状態による問題」は37.4(±22.3)から61.5(±23.1)に改善した(範囲0~100; それぞれp=0.032; p<0.001)。
論文から引用。QWLQの変化。
結論
■ 結論として、デュピルマブを開始した中等症から重症アトピー性皮膚炎患者は、主に健康上の問題から、作業能力と作業生活の質の低下を報告した。
■ デュピルマブ投与により、作業能力および作業生活の質の有意な改善が認められた。
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デュピルマブによるアトピー性皮膚炎治療は、そのひとの労働生産性を上げるかもしれない。
■ デュピルマブによる中等症以上のアトピー性皮膚炎治療は、労働生産性や作業の質をあげるという結果です。
■ 先行研究では、中等症から重症のアトピー性皮膚炎患者のおおくは、1年間に少なくとも1日は仕事を休み(J Eur Acad Dermatol Venereol. 2019; 33(7): 1331– 40.)、またアトピー性皮膚炎患者を対象とした別の研究では、平均9.6~19時間/週の労働生産性の低下があるそうです(Br J Dermatol. 2020; 182(4): 1007– 16.)。
■ これは、デュピルマブに限った話ではなく、アトピー性皮膚炎に対する適切な治療が作業効率を上げると考えるとよいかと思われます。
■ デュピルマブを使用するしないに関わらず、適切な治療介入を考えたいものです。
今日のまとめ!
✅ 中等症以上の成人アトピー性皮膚炎に対し、デュピルマブによる治療を行うと労働生産性があがるかもしれない。