以下、論文紹介と解説です。

Jabbar-Lopez ZK, et al. The effect of water hardness on atopic eczema, skin barrier function: A systematic review, meta-analysis. Clinical & Experimental Allergy 2021; 51:430-51.

水の硬度が(a)アトピー性皮膚炎の発症リスク,(b)アトピー性皮膚炎の治療の既往、(c)皮膚バリア機能に及ぼす影響について、ヒトや動物実験で得られた16文献をレビューした。

背景

■ 家庭での硬水はアトピー性皮膚炎を悪化させることが報告されており、幼少期の湿疹発症の一因となっている可能性がある。

 

目的

■ 水の硬度(高い炭酸カルシウム[CaCO3]濃度)が(a)アトピー性皮膚炎の発症リスク,(b)アトピー性皮膚炎の治療の既往、(c)皮膚バリア機能に及ぼす影響について、ヒトや動物実験で得られた文献をレビューする.

 

研究デザイン、データソース、適格基準

■ データベース(MEDLINE、Embase、Cochrane CENTRAL、GREAT、Web of Science)を開始時から2020年6月30日まで系統的に検索した。

■ ヒトと動物を対象とした観察研究や実験研究を対象とした。

■ 主要評価項目は、AE のリスクと皮膚バリア機能だった。

■ ランダム効果モデルを用いてメタアナリシスを行った。

■ エビデンスの確実性は、GRADE(Grading of Recommendations, Assessment, Development and Evaluations)を用いて評価した。

 

結果

■ 16研究が含まれていた。

385,901 人を対象とした 7研究から得られたプールされた観察データによると、硬水に曝露された小児と軟水に曝露された小児では、AE のオッズが上昇することが確認された(オッズ比 1.28; 95%CI 1.09~1.50; GRADE の確実性; 非常に低い)。

論文から引用。

■ ヒトを対象とした 2 つのメカニズム研究では、硬水と軟水の比較において、洗剤であるラウリル硫酸ナトリウ ムの沈着量が多いことが報告された。

軟水器と標準治療を比較した 2 件のランダム化比較試験では、軟水による客観的な AE 重症度の有意差は認められなかった(標準化平均差 0.06 標準偏差; 95%CI 0.16 ~0.27; GRADE 確実性; 中等度)。

論文から引用。

 

結論と臨床的妥当性

■ 硬水(CaCO3の範囲 76~350 mg/L 以上)地域での生活と小児の AEには正の関連があった。

■ しかし家庭用軟水器が、AEの客観的な疾患重症度を改善するというエビデンスはなかった。

■ 幼少期の皮膚炎症の発症に水の硬度が関与している可能性があるが、さらなる縦断的・介入的研究が必要である。

 

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水の硬度が高いとアトピー性皮膚炎が悪化しやすくなるようだが、かといって軟水器を使ってもアトピー性皮膚炎がよくなるというエビデンスは今のところないようだ。

■ 水の硬度はアトピー性皮膚炎の悪化因子となるようですが、では軟水器を使えばよいというものでもないようです。

■ このテーマに関しては、『SWET試験』の記事に、もうすこし詳しく書きました。

■ すくなくとも、軟水器を使用するかどうかは、慎重になったほうが良さそうですね。

 

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今日のまとめ!

 ✅ 水の硬度の高さはアトピー性皮膚炎の悪化因子と言えそうだが、かといって軟水器を使用してもアトピー性皮膚炎の重症度はかわらないようだ。

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