以下、論文紹介と解説です。
Simons E, et al. Timing of Introduction, Sensitization, and Allergy to Highly Allergenic Foods at Age 3 Years in a General-Population Canadian Cohort. The Journal of Allergy and Clinical Immunology: In Practice 2020; 8:166-75.e10.
カナダにおける前向きコホート研究(CHILD研究)に参加し3歳時にデータを得た2668人における、ピーナッツに感作し臨床的なアレルギーのあるリスク因子を評価した。
背景
■ アレルゲン性の高い食品を早期導入することは、ハイリスク乳児における食物アレルギーのリスク低減と関連している。
目的
■ 低リスク乳児に対する高アレルゲン食品の早期導入について、Canadian Healthy Infant Longitudinal Development (CHILD)研究のデータを用いて検討した。
方法
■ CHILDの参加者は、出生前に一般集団からリクルートされた。
■ 6か月ごとに、養育者が食品の導入とアレルギー反応を報告した。
■ 1歳と3歳の時に、ピーナッツ、卵、牛乳への感作を皮膚プリックテスト(skin prick testing; SPT)で測定し、アトピー性皮膚炎を診察により診断した。
■ 多変量ロジスティック回帰法を用いて、ピーナッツ、卵、牛乳の導入時期と、3歳時点での感作(SPT陽性)とIgE依存性アレルギーの可能性(現時点で未摂取であるが感作されており、特定の食品に対するアレルギー反応の既往が確認できる)との関連を検討した。
結果
■ 3歳時のCHILD参加者2669人のうち、ピーナッツに101人(3.80%)、卵に59人(2.21%)、牛乳に30人(1.12%)が感作を示し、ピーナッツに46人(1.78%)、卵に4人(0.16%)、牛乳に2人(0.08%)が臨床的にIgE依存性アレルギーの可能性が示唆された。
■ 生後12カ月以降にピーナッツを摂取開始した乳児は、3歳時にピーナッツに感作(オッズ比[OR]2.38; 95%信頼区間[CI] 1.39~4.07)、臨床的なアレルギーの可能性(OR 4.04; 95%CI 1.66~9.85)を示す確率が高かった。
■ これらの関連性は、1歳までに中等症から重症のアトピー性皮膚炎を発症しており、1歳時に卵に感作したハイリスクの乳児を除外しても残存した。
結論
■ 生後12ヵ月以降にピーナッツを開始した一般集団の乳児は、3歳時にピーナッツに対する感作し臨床的なアレルギーの可能性が高くなった。
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コホート研究なので確定とはいえないが、ピーナッツの開始時期は1歳未満のほうがリスクは低くなるのかもしれない(ピーナッツの粒は禁ですが)。
■ あくまでコホート研究における結果なので、確定ではありませんが、『ピーナッツの開始時期を1歳以降にすると、かえってピーナッツアレルギーの発症リスクになる可能性』が示唆されました(必ず発症するというわけではありません)。
■ 日本では、ピーナッツはそこまで多い摂取はないため、強い推奨には至っていないものの、ピーナッツアレルギーは決して少なく有りません。
■ 今後、『あえて遅らせることの方がリスク』という考えに切り替わっていく可能性は十分あります。個人的には微量で早期に開始することをお話することが多いです(もちろん、保護者さんの受け入れも十分配慮した上です)。
■ 始める際は、ピーナッツバター(スムースタイプ)で微量からとしています。もちろん、湿疹が先行してあったかたは特に、専門医にご相談くださいませ。
今日のまとめ!
✅ ピーナッツの開始時期を1歳以降にすると、3歳時点でのピーナッツアレルギーのリスクは2倍以上に高くなることが報告された。