以下、論文紹介と解説です。
Jo CE, et al. Facial and neck erythema associated with dupilumab treatment: A systematic review. Journal of the American Academy of Dermatology 2021; 84:1339-47.
デュピルマブによる顔面または頸部の紅斑を発症した16研究(101例)のシステマティックレビューを実施した。
背景
■ アトピー性皮膚炎を対象とした第3相臨床試験において、デュピルマブによる顔面紅斑や頸部の紅斑は報告されていないが、臨床現場ではこの有害事象を発症した患者が多数報告されている。
目的
■ デュピルマブに関連した顔面または頸部の紅斑を報告した全症例を概説し、この有害事象の特徴を明らかにするとともに、潜在的な病因と治療戦略も明らかにする。
方法
■ EMBASE、PubMedで検索した。
■ 2名の独立したレビュワーが、関連する研究を抽出しデータの抽出を行った。
結果
■ 16研究から患者101例がデュピルマブによる顔面または頸部の紅斑を発症したことが報告された。
■ 101例中52例(52%)が試験開始時のアトピー性皮膚炎の顔面または頸部の病変があり、101例中45例(45%)は既存のアトピー性皮膚炎とは異なる皮膚症状を報告したことから、別の病因があることが示唆された。
■ 病因としては、酒さ、アレルギー性接触皮膚炎、頭頸部皮膚炎などが示唆された。
■ 最もよく使用された治療法は、ステロイド外用薬、カルシニューリン阻害剤外用薬、抗真菌剤だった。
■ 有害事象の経過に関するデータが得られた57名の患者では、改善が29名、軽快が4名、治療反応なしが16名、悪化が8名だった。
■ 有害事象のためにデュピルマブの投与を中止した患者は101名中11名(11%)だった。
制限事項
■ 診断のための検査が限られていたこと、データ収集と報告が研究間で標準化されていなかったこと、レトロスペクティブな症例報告やケースシリーズに依存していたことが挙げられる。
結論
■ デュピルマブ投与を受けている患者の中には、通常のアトピー性皮膚炎の症状とは異なる顔面や頸部の紅斑を発症する患者がいる。
■ 迅速な発見と経験的治療により、この有害事象による苦痛やデュピルマブの中止を最小限に抑えることができる。
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デュピルマブは、今後丁寧に知見をつみあげて活用していく薬剤と言えるでしょう。
■ デュピルマブは高価な薬剤でもあり、よく考えてから使用するべき薬剤と思います。
■ そして、結膜炎の発症など、留意すべき点もあります。
■ 今後、丁寧に知見を積み上げる必要性がある薬剤とも言えましょう。
今日のまとめ!
✅ デュピルマブ使用中に顔面や頸部の皮膚病変が悪化する例があることが報告されたが、アトピー性皮膚炎とは別の病態であることが多く、デュピルマブを中止したのは1割程度だった。