以下、論文紹介と解説です。
Nachshon L, et al. Subjective oral symptoms are insufficient predictors of a positive oral food challenge. Pediatric Allergy and Immunology 2021; 32:342-8.
食物経口負荷試験652回(計323人)(牛乳71人、卵22人、ピーナッツ48人、ゴマ24人、ナッツ487人)において、主観的な口腔内症状があったケースの負荷試験の陽性率や重篤な症状を予測する率を検討した。
背景
■ 主観的な口腔内症状は、特に繰り返す場合には、その後の重篤な反応を恐れて食物経口負荷試験(oral food challenge; OFC)を中止してしまうことがある。
方法
■ Shamir医療センターのアレルギー・免疫・小児呼吸器研究所で2016年1月から2018年1月に3歳以上の患者を対象に実施された、牛乳、卵、ピーナッツ、ゴマ、ナッツの食物経口負荷試験に対する単施設の後ろ向きコホート研究で分析した。
■ 負荷中の主観的な口腔内症状を記録し、負荷の結果との関連を検討した。
結果
■ 計323人が、調査対象となった食品(牛乳71人、卵22人、ピーナッツ48人、ゴマ24人、ナッツ487人)に対して652回の食物経口負荷試験を行った。
■ 口腔内の主観的な症状は、実施した全OFCのうち237例(36.3%)で認められ、その率はほとんどの食品で同程度だった。
■ 口腔内の自覚症状があった場合の(負荷試験)陽性率は、自覚症状がなかった場合よりも有意に高かった(それぞれ69.6% vs 30.4%; P < 0.001)。
■ しかし、そのような症状が食物負荷試験の陽性を予測する際の偽陽性率は、すべての食品においては30.3%であり、ピーナッツで40%、ゴマで27.3%、牛乳で35.5%、卵で33%、ナッツで28.4%だった.
■ 全体として、主観的な口腔症状(subjective oral symptoms; SOS)は、OFCの転帰を予測する上で、感度56.7、特異度80.4、PPV69.6、NPV69.0だった。
■ 重要なのは、負荷試験の陽性時の反応は、主観的な口腔症状があってもなくても、重症度は同じ程度だったことである。
結論
■ 口腔内の自覚症状がある場合にOFCを継続することは、患者のリスクを高めることなく3分の1の症例で偽陽性を防ぐことができるため、推奨される。
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主観的な口腔内症状は、負荷試験が陽性になる可能性を予測するものの偽陰性である可能性もたかく、重篤な反応も予測しづらい。
■ 食物経口負荷試験時の主観的な口腔内症状にかんし、それ以外の症状がないならば、一般的にはそのまま負荷試験を継続することが多いです。
■ それは、偽陰性の可能性が高いからといえますが、負荷試験の陽性率が高くはなるものの最終的な重篤な症状を予測しないということからも、その方針は間違いとはいえないようです。
■ 一方で、負荷試験がおわったあと、『口腔内症状があるうちに中断していれば、重篤な症状まででなかったのではないか』という訴えを受けることもあり、心情的な軋轢を起こすこともありえます。
■ 事前にそのお話をしながら、負荷試験を継続するか否かをかんがえていかなければならないケースもあると言えるでしょう。
今日のまとめ!
✅ 食物経口負荷試験中の主観的な口腔内症状は、その後の負荷試験の陽性率が高いことを予測はするものの偽陰性率も高く、負荷試験陽性時の重篤度も予測しないようだ。
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