以下、論文紹介と解説です。

Harris RJ, et al. Effect of Vaccination on Household Transmission of SARS-CoV-2 in England. New England Journal of Medicine 2021.

英国における、新型コロナワクチンを接種していても家庭内感染を起こした例と、接種せずに家庭内感染をおこした例に関し、そのワクチンの効果を比較した。

背景/目的

新型コロナウイルス(severe acute respiratory syndrome coronavirus 2; SARS-CoV-2)に対するワクチン接種は、ワクチン接種者の感染を予防し、新型コロナウイルス感染症 (coronavirus disease 2019; Covid-19)の重症度を低下させる。

■ そこで、ワクチン接種後の感染という背景において、ワクチン接種が家庭内での感染を減少させるかどうかを調査した。

 

方法

■ イングランドにおいて、検査で確認されたすべてのCovid-19症例に関する情報があり、同じ住所であるすべての人のデータがリンクされているHousehold Transmission Evaluation Dataset(HOSTED)のデータを解析した。

■ SARS-CoV-2感染者のうち、SARS-CoV-2陽性となる21日以上前にChAdOx1 nCoV-19(アストラゼネカ社ワクチン)またはBNT162b2(ファイザービオンテック社ワクチン)ワクチンを少なくとも1回接種していてワクチン未接種の家庭内接触者に二次感染したリスクと、ワクチン未接種の家庭内接触者に二次感染したリスクを比較した(二次感染のリスクは陽性反応となった症例の2~14日後にSARS-CoV-2が陽性反応となったと定義)。

■ Covid-19発症した指標となる例(インデックス患者)と家庭内接触者の年齢と性別、地理的地域、インデックス患者が発生した週齢、剥奪指標(社会経済的要因とその他の要因の複合スコア)、世帯の種類と規模を調整したロジスティック回帰モデルを装着した。

管理人注
deprivation(剥奪指標)とは、高値ほど社会経済的に豊かではないとみなされるようです

■ また、陽性反応が出た日までに、ワクチンを接種していたインデックス患者の効果発現のタイミングも考慮した。

 

結果

■ 2021年1月4日から2月28日までに、ワクチンを接種していないインデックス患者の家庭内接触者は960,765人であり、Covid-19の二次感染者は96,898人(10.1%)だった(インデックス患者とその家庭内接触者に関する記述的データは「結果のまとめ」の項に記載)。

■ インデックス患者のワクチン接種状況に応じた二次感染者数と、ロジスティック回帰モデルの結果を表1に示す。

全体として、陽性反応が出る21日以上前にワクチンを接種したインデックス患者の家庭では、ワクチンを接種していないインデックス患者の家庭に比べ、家庭内感染の可能性が約40~50%低く、この結果は2つのワクチンで同様だった

■ 今回のデータセットでは、ワクチンを接種したインデックス患者のほとんど(93%)が1回目の接種のみを受けていた.

■ インデックス患者へのワクチン接種時期に応じて家庭内接触者の感染リスクを評価したところ、陽性反応が出る14日以上前にワクチンを接種した場合に防御効果が認められた(図S1,S2,補足資料)。

 

考察/結論

■ HOSTEDには、症状や周期的な閾値に関するデータは含まれておらず、診断された症例に関する情報しかない。

■ 接触者を積極的に追跡調査し、血清学的検査を用いた研究では、本研究で観察されたものよりも高い家庭内感染率が示されている。

■ インデックス患者のワクチン接種時期に関する我々の知見は、ワクチン接種後の個人の保護のタイミングに関する過去のデータと一致しており、総合的に知見を裏付けるものとなっている。

■ インデックス患者と二次感染者の分類が間違っていた可能性があるが、このような分類の間違いは、ワクチン接種による推定保護効果を弱める傾向がある。

■ ワクチンを2回接種した後のウイルスの伝達性の低下については、さらなるデータが必要である。

■ ワクチン接種のベネフィットを伝えるために、他の新たなエビデンスとともにこれらの知見を考慮することが重要となるだろう。

 

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ワクチンを接種することで、家族への伝播も大きく減らすことができる。

■ だれも、自分が感染のきっかけになって家族にうつしたいとは思っていないでしょう。

■ ですので、家庭内感染のリスクを低下させるという事実はワクチン接種の動機のうちのひとつといえます。

 

■ この結果は、多くが1回接種でしたので、2回接種をすればもっと大きな効果が得られた可能性が高いでしょう。

■ そして、接種してから14日以上の期間が必要であることも注意が必要です。

 

■ 自分だけでなく家族も守る、そういった視点からもワクチンをとらえていきたいものですね。

 

今日のまとめ!

 ✅ ワクチンの1回接種で、家族への伝播リスクを半分程度に減少させることができると推測される。

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