以下、論文紹介と解説です。

Nakatsuji T, et al. Use of Autologous Bacteriotherapy to Treat Staphylococcus aureus in Patients With Atopic Dermatitis: A Randomized Double-blind Clinical Trial. JAMA Dermatol 2021.

中等症以上のアトピー性皮膚炎患者11人を、自己由来の抗菌作用を有するコアグラーゼ陰性ブドウ球菌を再塗布する5人、基剤を塗布する6人にランダム化し、皮膚症状の改善度などを比較した。

重要性

アトピー性皮膚炎(Atopic dermatitis; AD)は、黄色ブドウ球菌によって悪影響を受ける可能性がある。

■ アトピー性皮膚炎の皮膚のマイクロバイオームには、黄色ブドウ球菌を殺すことができるコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(coagulase-negative Staphylococcus; CoNS)が不足している。

 

目的

■ AD患者の抗菌作用のあるCoNS(antimicrobial-producing CoNS; CoNS-AM+)を同一患者に自家再導入することで、黄色ブドウ球菌を抑制し、臨床転帰を改善できるかどうかを評価する。

 

試験デザイン、セッティング、参加者

■ 2016年4月から2018年5月に、中等症~重症AD患者(成人)11人を対象に、自己由来CoNS-AM+(n=5)または基剤(n=6)のいずれかを投与するようにランダム化した、基剤対照二重盲検単施設臨床試験を実施した。]

■ 2018年5月から2019年7月にデータを解析した。

■ 自己由来CoNS-AM+は、AD患者の各患者の非病変皮膚から採取したスワブから分離し、培養により増やした後、107コロニー形成単位/g濃度で前腕部に再塗布した。

 

主な結果と測定法

■ 本研究の主要評価項目は、自己由来CoNS-AM+をAD患者に1週間塗布した後の黄色ブドウ球菌の存在量を、培養法およびDNA法により評価することだった。

■ 副次的評価項目は、安全性と臨床結果の評価だった。

 

結果

■ 11人(男性4名[36.4%]、女性7名[63/6%])が、組み入れ基準に基づいてリクルートされた。

■ 自己由来CoNS-AM+を投与した群と基剤を投与したそれぞれの群で、重篤な有害事象はなかった。

CoNS-AM+自己投与を受けた患者の治療終了時における病変部皮膚上の黄色ブドウ球菌のコロニー形成は、基剤投与(試験開始時に対するlog10比の平均値 -1.702; 95%CI; -2.882~-0.523)と比較して99.2%減少し(試験開始時に対するlog10比の平均値 0. 671; 95% CI -0.289 ~ 1.613; P = 0.01)、投与後4日間持続した(CoNS-AM+:試験開始時に対するlog10比の平均値 -1.752; 95% CI -3.051 ~ -0.453; 基剤 試験開始時に対するlog10比の平均値 -0.003; 95% CI, -1.083~ 1.076; P = 0.03)

■ 重要なのは、CoNS-AM+を投与された患者の11日目に評価されたEczema Area And Severity Index(EASI)スコア(変化率の平均 -48.45; 95%CI -84.34~-12.55)が、基剤による治療(変化率の平均 -4.52; 95%CI -36.25~27.22; P = 0.04)と比較して有意に改善したことである。

 

結論と関連性

■ このランダム化比較試験のデータは、皮膚常在菌の自己株を用いた細菌療法により、黄色ブドウ球菌のコロニー形成を安全に減少させ、疾患の重症度を改善できることを示唆している。

■ より大規模な研究が必要であるが、黄色ブドウ球菌を減少させるこの個別化されたアプローチは、AD患者に抗生物質、免疫抑制、免疫調節を超える代替治療を提供する可能性がある。

 

スポンサーリンク(記事は下に続きます)



 

アトピー性皮膚炎に対しても、『マイクロバイオーム』からみた治療が試みられるようになるのかもしれません。

■ たとえば、クローン病や潰瘍性大腸炎などの難治性炎症性腸疾患等に対して行われる糞便移植という治療法があります。

糞便移植(FMT)

■ そのような、『マイクロバイオーム』に配慮した治療法が、アトピー性皮膚炎にも今後考えられるようになるのかもしれません。

■ もちろん、11人という少ない例ですし、抗菌作用のある黄色ブドウ球菌を調査することは簡単ではないでしょう。

■ ですので、期待される方法ですが、実用化にはまだ時間がかかるでしょう。

 

created by Rinker
内外出版社
¥1,650 (2024/04/17 02:46:37時点 Amazon調べ-詳細)

今日のまとめ!

 ✅ 抗菌作用のある物質を産生する黄色ブドウ球菌の自己移植により、アトピー性皮膚炎を改善させることができるのかもしれない。

このブログは、私の普段の勉強の備忘録やメモであり、細かい誤字脱字はご容赦ください。基本的に医療者向けです。

知識の共有を目的に公開しておりますが、追加して述べる管理人の意見はあくまでも個人としての私見です。
所属するいかなる団体の立場も代表するものではありませんし、すべての方に向いているという情報でもありません。予めご了承いただきたく存じます。

このブログの『リンク』は構いません。
しかし、文章やアイデアを盗用・剽窃・不適切な引用したり、許可なくメディア(動画を含む)に寄稿することはご遠慮ください。
クローズドな場での勉強会などに使用していただくことは構いません。
Instagram:2ヶ月で10000フォロワーを超えました!!!

Xでフォローしよう