以下、論文紹介と解説です。
Nakagawa H, et al. Delgocitinib ointment in pediatric patients with atopic dermatitis: a phase 3, randomized, double-blind, vehicle-controlled study and a subsequent open-label, long-term study. J Am Acad Dermatol 2021 [Online ahead of print].
2~15歳の日本人のアトピー性皮膚炎患者137人を対象に、デルゴシチニブ(コレクチム)0.25%軟膏もしくは基剤に1:1の割合で4週間の二重盲検試験を行い、さらに52週間のオープン試験で安全性などを確認した。
背景
■ 外用JAK阻害剤であるデルゴシチニブ0.5%軟膏は、日本では成人のアトピー性皮膚炎患者を対象に承認されている。
目的
■ 小児のアトピー性皮膚炎患者を対象に、デルゴシチニブ軟膏の有効性および安全性を検討する。
方法
■ 第1部では、2~15歳の日本人患者を対象に4週間の二重盲検試験を行い、デルゴシチニブ0.25%軟膏もしくは基剤に1:1の割合でランダム化した。
■ さらに、52週間の延長期間である第2部では、デルゴシチニブ0.25%または0.5%の軟膏を投与した。
結果
■ 試験開始時、患者の約半数は中等症ADだった。
■ 第1部の治療終了時に、主要評価項目である修正Eczema Area and Severity Index(mEASI)スコアの試験開始時からの最小二乗平均変化率は、デルゴシチニブ軟膏が基剤に比べて有意に大きかった(-39.3% vs +10.9%; P < 0.001)。
論文から引用。治療終了時にmEASIスコアが50%以上または75%以上改善した患者の率。
論文から引用。痒みスコアのベースラインからの日ごとの変化(平均-SD)を経時的の評価。
■ 第2部において、56週目までADの改善も見られた。
■ 有害事象の多くは軽度であり、試験期間中、デルゴシチニブとは無関係だった。
最も多い治療に関連した有害事象(AE)は,塗布部位の毛嚢炎だった(n=4[3.0%])。
軽度の塗布部位の刺激は1名の患者のみで、その他の塗布部位の症状(灼熱感や刺すような痛みなど)は認められなかった。
また、季節性疾患であるインフルエンザを除き,AEの発現率は経時的に増加しなかった。
0.5%軟膏投与時のAEの発現率は,0.25%軟膏投与時と同様だった。
また、年齢層によるAEの発生率に大きな差は認められなかった。
試験期間中、患者の83.6%~95.1%において、デルゴシチニブの血漿中濃度は検出されなかった(定量下限値1.00ng/mL)。
デルゴシチニブの血漿中濃度が検出された患者の率は、試験期間中の受診者間および年齢層間で有意な差は認められず、デルゴシチニブの最大血漿濃度は、1.55~11.8ng/mLの範囲だった。
制限事項
■ 日本人患者のみを対象とした。
■ 第2部では、対照群が含まれておらず、レスキュー治療が認められていた。
結論
■ デルゴシチニブ軟膏は、日本人の小児AD患者に56週間まで塗布した場合、有効性があり、忍容性も認められた。
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デルゴシチニブ(コレクチム)軟膏は、小児に対しても有効で安全性も忍容される。
■ 論文からは、塗布部位の毛嚢炎や伝染性軟属腫など治療に関連した皮膚感染症はいずれも軽症で発生率も低いとされており、年齢にかかわらずデルゴシチニブ(コレクチム)軟膏が全身感染症のリスクを高める可能性は低いことが示されています。
■ 2021年3月にデルゴシチニブ(コレクチム)軟膏が小児に保険適用となり、わたしもすこしずつ経験を積んでいます。
■ 個人的には、『効く・効かない』に差がある印象ですが、その理由がどこにあるのかをまたつかみきれていない感じです。
今日のまとめ!
✅ デルゴシチニブ軟膏は、小児に対しても有効で安全性もある。
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