以下、論文紹介と解説です。

Lovén Björkman S, et al. Peanuts in the air - clinical and experimental studies. Clin Exp Allergy 2021; 51:585-93.

ピーナッツアレルギーのある児84人を、ピーナッツの入ったボウルから0.5mの距離で30分間空気中のピーナッツ負荷し、症状の出現と蛋白質の検出量を検討した。

背景

■ 食物アレルゲンに対するアレルギー反応は、通常、摂取した後に起こる。

■ しかし、空気中のピーナッツに対する反応に恐れることは、ピーナッツアレルギーのあるひとにとって共通の悩みである。

■ しかし、空気中のピーナッツアレルゲンによる重篤な反応に関する科学的な報告はない。

 

目的

■ 空気中のピーナッツ負荷を受けたピーナッツアレルギーの小児におけるアレルギー反応の発生を調査し,別の実験的評価により空気中のピーナッツ蛋白質量を測定した。

 

方法

■ ピーナッツアレルギーの小児84人は、制御された条件下で、ピーナッツの入ったボウルから0.5mの距離で30分間、空気中のピーナッツ負荷を受けた。

■ 別の試験では、エアポンプに接続されたSensAbuesフィルターを用いて、ローストしたピーナッツと乾燥ローストピーナッツから空気中のピーナッツタンパク質を、距離と時間を変えて採取した。

■ 採取した空気中のピーナッツタンパク質を抽出溶解し、ELISAで検出した。

■ 生物活性の確認には、好塩基球活性化試験を用いた。

 

結果

空気中のピーナッツアレルゲンに対する中等度/重度のアレルギー反応は認められなかった。

■ 2人(2%)に軽度の結膜炎が見られたが、治療の必要はなかった。

ピーナッツもしくはAra h 2特異的IgE抗体は、反応を予測しなかった

■ 試験では、生物学的活性のあるピーナッツタンパク質が、乾燥ローストで166ng/ml(中央値)、ローストで33ng/ml(中央値)と非常に低い量で検出されたが、ピーナッツからの距離(0.5~2m)を離して採取すると大きく減少した

■ 曝露時間の増加は、0mの地点で採取されたピーナッツタンパク質量に影響を与え、中央値が最も高かったのは60分後(p = 0.012)であり、時間傾向はp = 0.0006だった。

 

結論と臨床上妥当性

■ 空気中のピーナッツタンパク質に対するアレルギー反応は稀であり、ピーナッツもしくはAra h 2に対するIgE抗体高値によって予測することはできない。

■ 空気中に検出された生物学的に活性のあるピーナッツ蛋白質はごく少量であり、中等度/重度のアレルギー反応を引き起こす可能性は低いと思われる。

 

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空気中のアレルゲンで、その場で重篤な症状が起こるリスクは低いようだ。ただし、長期的には感作のリスクが上がる可能性があるといえる。

■ 『食べていないのに目が腫脹した』という話をよく聞くと、手についた食物で目をこすったりしたというケースが多いように思います。

■ 実際、安定した皮膚との接触によるピーナッツバターの曝露や吸入曝露試験では、全身性・呼吸器系の反応を示した者はおらず、紅斑(3人)、紅斑を伴わないそう痒(5人)、膨疹・紅斑(2人)は、ピーナッツバターと皮膚が接触した部位にのみ生じたとされています。

 

■ 一方で、手にもついていないものの『顔や目が赤くなった』というケースはときどき聞きます。

■ もちろん、目の前でピーナッツの入っている菓子袋を開ける…などというような条件では拡散量の差はあるでしょうし、『極めて重篤な場合』にはこの限りではありません。

■ 別の報告では、ピーナッツ1.5mgでも耐えられない場合はリスクがある程度あるのではないかという報告があります。

 

■ しかし、今回の研究結果からは、多くのケースでは重篤な症状にはなりにくいといえるようです

■ ただし、家庭でピーナッツをよく摂取していると、その家庭のホコリのなかにはピーナッツ蛋白が増え、その家庭にすむ子どものピーナッツアレルギーの発症リスクになることが示されています。

■ その場でのリスクはそれほど高くないものの、長期的には食物アレルギーのリスクになるということと考えればよいといえそうです。

 

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今日のまとめ!

 ✅ 空気中のピーナッツアレルゲンは極めて少なく、50cm程度離れるとリスクは大きく下がり、重篤な症状が惹起される可能性は低いようだ。

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