以下、論文紹介と解説です。

Lopez Bernal J, et al. Effectiveness of COVID-19 vaccines against the B. 1.617. 2 (Delta) variant. New England Journal of Medicine 2021.

英国における新型コロナの症状のある全例に関するデータを用いて、ワクチン接種状況に応じ、アルファ株・デルタ株の症例の割合を推定した。

背景

■ Covid-19の原因ウイルスであるsevere acute respiratory syndrome coronavirus 2(SARS-Cov2)のB.1.617.2(デルタ)変異は、インドでの患者急増の原因となり、現在では英国での患者増加が顕著になるなど、世界中で検出されている。

■ この変異株に対するBNT162b2やChAdOx1 nCoV-19ワクチンの有効性は不明である。

管理人注
BNT162b2は、ファイザー/ビオンテック社のワクチン
ChAdOx1 nCoV-19は、アストラゼネカ社のワクチンです。

 

方法

■ 診断陰性例コントロール試験を用いて、デルタ変異が流行し始めた期間に、デルタ変異もしくは優勢な株(B.1.1.7もしくはアルファ変異)による症状のある本疾患に対するワクチン接種の効果を推定した。

■ 変異は、シークエンスを用いて、スパイク(S)遺伝子の状態に基づいて同定された。

■ 英国のCovid-19 の症状のある全例に関するデータを用いて、患者のワクチン接種状況に応じたいずれかの変異を持つ症例の割合を推定した。

参加者のデータ。

 

結果

ワクチン(BNT162b2もしくはChAdOx1 nCoV-19)を1回接種した後の効果は,アルファ変異(48.7%; 95%信頼区間[CI]45.5~51.7)に比べ、デルタ変異(30.7%; 95%信頼区間[CI] 25.2~35.7)で顕著に低かったが、この結果は両ワクチンで類似していた

BNT162b2ワクチンによる2回接種時の有効性は、アルファ変異で93.7%(95%CI 91.6~95.3)、デルタ変異で88.0%(95%CI 85.3~90.1)だった

ChAdOx1 nCoV-19ワクチンによる2回接種時の有効性は、アルファ変異で74.5%(95%CI 68.4~79.4)、デルタ変異で67.0%(95%CI 61.3~71.8)だった

論文から引用。ワクチンの効果は1回ではかなり低くなるが、デルタ株であっても2回接種後は効果は十分保たれている。ファイザー社のほうが有効性は高いが、アストラゼネカ社の効果も残っている。

結論

■ ワクチンを2回接種によル効果の低下は、アルファ型と比較してデルタ型においてわずかな差しか認められなかった。

■ 1回目の接種では、ワクチン効果の絶対差は顕著だった。

■ この知見は、(Covid-19に)脆弱な人(管理人注; ワクチン未接種もしくは1回接種)においてワクチン2回接種によるを効果の最大化をする努力を支持するものである。

■ (英国公衆衛生局(Public Health England)から資金提供を受けている)

 

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現在有効なワクチンの接種率をあげて重症者を減らし、感染拡大をすこしでも小さくすることで新たなきびしい変異をおこさないことを願っています。

英国における検討において、デルタ株にもファイザー社のmRNAワクチンの効果(発症感染予防効果も)が期待できるという結果です。

■ ただ、長期的にはどうなるかはまだ十分わかっていません。

■ 先行して接種率が上昇したイスラエルでは、『2021年6月20日から7月17日までの有効性の推定値が、以前の推定値64%から低下し、88%有効であるという英国のデータと矛盾する』、という報道もあります。

■ イスラエルでは、接種完了からの期間が長くなってきているから『かもしれません』。

 

■ 3回目の接種が必要かどうかは、今後、先行して接種が進んだ国・地域の状況を鑑みてすすめるとして、現状では2回接種率を高めていったほうがよいと、個人的には思います。

■ そして接種からの期間が長くなってきていても、重症化の予防効果はのこる可能性が示唆されています(このあたりが、ワクチンに発症感染予防効果がないと誤解される要因のような印象があります)。

 

■ そういえば、昨日(8月6日)アベプラで、現場の先生方6人を交えた番組が放送されていました。

■ その中で、ワクチン未接種の方々から広がる重症者への医療に携わる先生方の苦悩と厳しさがつたわってくるのと対照的に、訪問医療されている佐々木先生の『95%の患者さんにも医療者にもワクチンを接種しているので(感染への恐怖はほとんどなく)凪の状況です。もし感染者が見つかっても全然広がることがないです』というお話が印象的でした。

■ 感染を抑えていき重症者をへらすという目標があり、ワクチンという方法があり、そして接種率が高まった集団で達成された景色も見えている…そういうことだと思います。

■ 今後、感染がひろまってあらたな変異が出てくる前に、なんとかならないものか…と思っていますが…

■ すでにラムダ株がはいってきたというニュースがはいってきました。

■ ラムダ株は、デルタ株がVOC(懸念される変異株)であるのに対し、VOI(注目すべき変異株)です(デルタよりも、現状では位置づけは下)。

■ ラムダ株に関してわかっていることは限られますが、流行をゆるしてしまった地域から次のVOC(懸念される変異株)、VOI(注目すべき変異株)がうまれやすくなります。

 

■ 今回の日本の流行で、次のVOC・VOIが生まれることは、懸念材料としておおきいと思われます。

 

今日のまとめ!

 ✅ ファイザー社・アストラゼネカ社のデルタ株への感染予防効果は、2回接種後であればかなり期待できる。しかし、長期的には感染予防効果はさがってくるかもしれない。

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