以下、論文紹介と解説です。
Njiru BN, et al. Trapping of the malaria vector Anopheles gambiae with odour-baited MM-X traps in semi-field conditions in western Kenya. Malaria Journal 2006; 5:1-8.
ケニア西部の半野外において、匂いを付けたトラップ(靴下に付着させた人間の足の匂い、二酸化炭素、アンモニア、1-octen-3-ol)に生後3~5日の雌のガンビエハマダラカがどれくらい反応するかを検討した。
背景
■ 匂いを利用した蚊のトラップシステムの開発を成功させるためには、装置の設計と動作原理に加えて、行動活性のある半化学物質を特定することが重要である。
■ 実験室での調査では、様々な「誘引物質」が同定されているが、これらの中で野外での捕獲数を増やすものは少ない。
■ 本研究では、実験室と野外の中間的なシステムを提示し、人間の足の臭いがAnopheles Gambiaeの行動反応を誘発するという先行研究を確認した。
方法
■ 生後3~5日の雌のAn.gambiaeが匂いを付けた逆流式トラップ(MM-Xモデル; American Biophysics Corp; RI)に対する反応を、ケニア西部の半野外(スクリーンハウス)条件で研究した。
■ トラップには、人間の足の匂い(靴下に付着)、二酸化炭素(CO2、500ml/min)、アンモニア(NH3)、1-octen-3-ol、それらの組み合わせを付着させた。
■ トラップの捕獲量を対数(x+1)変換し、ラテン二乗分散分析を行った。
結果
■ 1-octen-3-ol以外のすべての匂いの誘引剤は、誘引剤を使用していないトラップと比較して、トラップの捕獲数を有意に増加させた(P < 0.05)。
■ 足の匂いは、ナイロンや綿の靴下の生地に付着した後、少なくとも8日間は(蚊の誘引)行動を維持した。
■ 足の匂いとCO2の組み合わせでは、相乗効果(P < 0.001)が見られ、それぞれ3.8倍、2.7倍の捕獲量の増加が見られた。
結論
■ これらの結果は、アフリカのマラリアを媒介する蚊における、人間の足の匂いに対する行動反応を実験室外で報告した初めてのものであり、この匂いの複合体の分画や個々の化学成分についてのさらなる調査が必要である。
■ 半野外システムは、カイロモンの候補を高処理スクリーニングできる可能性があり、この蚊や他のアフリカの蚊種に対する効率的なトラップ誘引システムの開発を促進するかもしれない。
カイロモンは、生物によって放出される情報化学物質のこと。
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蚊にさされやすい理由のひとつに、『足の匂いが蚊がこのむタイプなのかも』という説明がある。
■ もちろん、この匂いが『臭いのかどうか』はわかりませんが、そういえば昔、『足の消毒をすると蚊がよってこなくなる』なんていう話題もありましたよね。
■ いかにも新説のようですが、実際のところは先行研究があり、『小屋の中に洗っていない子どもがいると、洗った子どもがいる小屋に比べて多くの蚊が誘引される(Bulletin of Entomological Research 1942; 33:91-142.)という報告から、足の臭いは蚊にとって誘引する匂いとしては大きいという報告が1990年代から多くあります。
■ とはいえ、この報告を外来で尋ねられても、『足がにおうのかも』とはちょっと言いづらいですし、そもそも足の匂いだけではありませんしね(70種類以上候補があるそうです)。
■ 『二酸化炭素かもしれませんねえ』などとお答えしています(汗)。
■ もともと、子どものほうが大人よりも蚊にさされると腫れやすいので、その点は加味したほうがいいかなと思っています。
今日のまとめ!
✅ 足の臭いのついたナイロン製の靴下は、最大8日間、蚊を誘引するかもしれない。
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