以下、論文紹介と解説です。

Liu X, et al. Safety and immunogenicity of heterologous versus homologous prime-boost schedules with an adenoviral vectored and mRNA COVID-19 vaccine (Com-COV): a single-blind, randomised, non-inferiority trial. Lancet 2021.

アストラゼネカ(ChAd)→ChAd、ChAd→ファイザー(BNT)、BNT→BNT、BNT→ChAdの接種を28日もしくは84日の接種間隔群に登録し、そのうち研究が終了した28日群463人の免疫原性・安全性を比較した。

背景

■ 初期接種を異種ワクチンでブーストするというCOVID-19ワクチンスケジュールを使用することで、COVID-19をより高く免疫を誘導することができる可能性がある。

■ そして、アデノウイルスベクターワクチン(ChAdOx1 nCoV-19,AstraZeneca社,以下ChAd)とmRNAワクチン(BNT162b2,Pfizer-BioNTech社,以下BNT)を4週間間隔で接種する異種ワクチンの混合スケジュールは、同種接種スケジュールに比べて反応性が高いことを報告されている。

■ そこで、ChAdワクチンとBNTワクチンを用いた異種混合スケジュールの安全性と免疫原性について報告する。

 

方法

■ Com-COVは、ワクチンの安全性、反応原性、免疫原性を評価する参加者を盲検化した無作為化非劣性試験である。

■ 50歳以上の成人で、合併症がない・もしくは十分に合併症がコントロールされており、SARS-CoV-2の感染歴がない人を対象とし、英国内の8施設でリクルートされた。

■ 対象者の大部分は一般コホート(28日もしくは84日の初回接種/ブースト接種間隔)に登録され、28日もしくは84日の初回接種/ブースト接種間隔で投与されるChAd/ChAd、ChAd/BNT、BNT/BNT、BNT/ChAdにランダム化された(1:1:1:1:1,1:1)。

■ 対象者の一部は免疫コホート群(n=100)に登録され、免疫反応を評価するために血液検査が追加された。

■ これらの参加者は、4つのスケジュール(28日間隔のみ)にランダム化された(1:1:1:1)。

■ 参加者は投与されたワクチンについてマスキングされたが、初回接種・ブースト接種の間隔についてはマスキングされなかった。

■ 主要評価項目は、ChAd/BNT、ChAd/ChAd、BNT/ChAd、BNT/BNTを比較したときの、ブースト後28日目の血清SARS-CoV-2の抗スパイクIgG濃度(ELISA法で測定)の幾何平均比(GMR)だった。

■ これらの比較において、GMRの片側97.5%CIの下限値が0.63より大きい場合、異種ワクチンスケジュールは承認された同種ワクチンスケジュールに対して非劣性であるとした。

■ 主要解析は、試験開始時に血清抗体価陰性であったper-protocol集団で行われた。

■ 安全性の解析は、試験用ワクチンを少なくとも1回接種した参加者を対象に行われた。

■ この試験はISRCTN 69254139に登録されている。

 

結果

■ 2021年2月11日~2月26日に、830人が登録され、ランダム化された。

そのうち463人は初回接種・ブースト接種の間隔が28日であり、その結果が今回報告された

■ 参加者の平均年齢は57.8歳(SD 4.7)で、女性が212人(46%)、マイノリティ人種が117人(25%)だった。

ブースト接種28日後に、ChAd/BNT投与群のSARS-CoV-2抗スパイクIgGの幾何平均濃度(12 906 ELU/mL)は、ChAd/ChAd投与群(1392 ELU/mL)に比べて非劣性であり、GMRは9.2(片側97.5%CI 7.5~∞)であった。

アストラゼネカ→アストラゼネカより、アストラゼネカ→ファイザーのほうが、新型コロナスパイク蛋白に対するIgG抗体が高い傾向がある。

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■ BNTで初回接種した被験者では、異種ワクチンスケジュール(BNT/ChAd 7133 ELU/mL)は同種ワクチンスケジュール(BNT/BNT 14 080 ELU/mL)に対し非劣性は示されず、GMRは0.51(片側97.5% CI 0.43~∞)だった。

ファイザー→ファイザーより、ファイザー→アストラゼネカのほうが、抗体価が低い傾向がある。

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■ 重篤な有害事象は全群で4件発生したが、いずれもワクチンに関連したものではないと考えられた。

 

解釈

■ BNT/ChAdレジメンは非劣性基準を満たさなかったが、異種混合ワクチンレジメンによるSARS-CoV-2抗スパイクIgG濃度は、COVID-19・入院リスクに対する有効性が証明されている公認されたワクチンスケジュール(ChAd/ChAd)よりも高かった。

■ ChAd/ChAdと比較してChAd/BNTの免疫原性が高いことに加えて、これらのデータは、ChAdやBNT COVID-19ワクチンを用いた異種混合ワクチンによる初回接種・ブーストワクチン接種の柔軟性を支持するものである。

 

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アストラゼネカ→ファイザーワクチン接種の順で接種すると、抗体価はより高くなりそう…ではあるが、ファイザー→アストラゼネカはファイザー→ファイザーよりは低くなりそう。

■ 交差接種に関しては、あくまでアストラゼネカワクチンの不足に対する苦肉の策で他社のワクチン接種が行われたことに端を発していると私は理解しています。

 

■ そして、新型コロナの変異株に対する体液性免疫反応&細胞性免疫反応に対しより有利な効果があるのではと考えられるようになりました。

▷Deming ME, Lyke KE. A ‘mix and match’approach to SARS-CoV-2 vaccination. Nature Medicine 2021:1-2.

 

■ ただし、これも私の理解ではという前提ですが、あくまで1回目のワクチンがアデノウイルスベクターワクチン(アストラゼネカワクチンなど)である場合に、2回目のワクチンがmRNAワクチン(ファイザー)を接種するというケースでのみ、有効性が『ある程度』評価されていると考えています。

■ ですので、アストラゼネカワクチンが接種されていない我が国で交差接種をするかどうかに関しては、よく検討しなければならないように考えています。

 

■ もちろん、ワクチンが不足する場面では、柔軟な運用が必要です。

■ ただし本来ならば、(血栓の副反応のリスクの低い)高齢者に対しアストラゼネカワクチンを優先接種し、2回目をmRNAワクチンを…としたいところです。これは、効果としても有効と思えます。

 

■ しかし、現状では高齢者にほとんどmRNAワクチンを2回接種した以上、アストラゼネカワクチンの活用に関してどうするかを考える時期なのかもしれません。

■ 個人的には現在も接種しておられない(この場合、なんらかの理由で接種していないとは思われますが)お年寄りに対してアストラゼネカワクチンの1回目を接種して、mRNAを若いひとたちに回す…という方針が良いように思いますが、現実的にはなかなかむずかしいのかもしれません。

 

今日のまとめ!

 ✅ アストラゼネカ社ワクチン→ファイザー社ワクチンの順で接種すると、より抗体価が高いかもしれない。

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