以下、論文紹介と解説です。

Nagakura K-i, et al. A randomized trial of oral immunotherapy for pediatric cow's milk-induced anaphylaxis: Heated vs unheated milk. Pediatric Allergy and Immunology 2021; 32:161-9.

牛乳に対しアナフィラキシー歴のある5歳以上の児33人を、加熱乳3mL連日群、非加熱乳3mL連日群にランダム化し、1年間の治療効果と安全性を比較した。

背景

牛乳(cow's milk; CM)経口免疫療法(oral immunotherapy; OIT)中に重篤な反応が起こることがある。

■ そこで、アナフィラキシーのある児において、加熱牛乳(heated milk; HM)または非加熱牛乳(unheated milk; UM)を用いた低用量OITの安全性と有効性を検討した。

 

方法

■ 二重盲検プラセボ対照食物負荷試験により、3mLのHMを摂取して症状が発現した小児を、HM群 17人またはUM群 16人にランダム化した。

HM群では、牛乳を125℃で30秒間加熱して3秒間スプレードライして調製した粉状の乳を使用し、UM群では、高温瞬間殺菌とよばれる、食品衛生法に基づく125℃2秒殺菌の非加熱乳を使用しています。
すなわち『非加熱乳』といっても、完全に非加熱にはなりません。

 

最初は5日間入院し,1日目と2日目にDBPCFCを実施、陽性の場合には患者をランダム化して3日目からロラタジン10 mgの前投薬しつつ、DBPCFCの閾値の半分のHMもしくはUMによるOITを実施。その後、ゆっくりと3mLまで増量して維持という方法をとっています。

■ HM群では125℃で30秒間加熱した粉ミルクを摂取し、UM群ではUMを使用した.

■ 患者は5日間入院し、HMもしくはUMを徐々に3mL/日に増量し、自宅でも3mL/日の摂取を継続した。

■ 1年後、患者は2週間の除去してから、2日間連続で3mL、25mLのHMの食物経口負荷試験(OFC)を受けた。

 

結果

■ 試験開始時の牛乳もしくはカゼイン特異的IgE抗体価は、HM群で56.0/51.4 kUA/L、UM群で55.2/65.6 kUA/Lだった。

1年後、3mLおよび25mLのOFCが陰性だったのは、HM群で35%と18%、UM群では50%と31%だった

家庭での摂取1回あたりの中等症もしくは重症の症状もしくは呼吸器症状の発生率は、HM群がUM群よりも有意に低かった(それぞれ0.7%/1.2% vs 1.4%/2.6%; P < 0.001)

■ β-ラクトグロブリン特異的IgG4抗体価はUM群でのみ試験開始時から有意に上昇したが、カゼイン特異的IgG4抗体価は両群で試験開始時から有意に上昇した。

 

結論

■ HM-OITはUM-OITよりも安全に免疫学的変化を誘導した。

■ しかし、HM-OIT の治療効果が低い可能性については、より大規模な研究で評価する必要がある。

 

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安全性を優先するか、効果を優先するかで加熱乳or非加熱乳を使い分けるという方法が想定されるかもしれない。

■ この研究結果をみると、加熱乳のほうが非加熱乳よりも安全性は高いけれども、経口免疫療法の効果はひくいとまとめられるでしょう。

■ 牛乳蛋白には大きくカゼイン分画と乳清分画にわかれます。そしてカゼイン分画は加熱によるアレルゲン変化は少ないと考えられています。

 


■ すなわち、カゼイン分画ではなく乳清分画のアレルゲン性がさがったことがこの結果に結びついたのではと感じました。

■ この研究結果から、安全性を優先するか、効果を優先するかで加熱乳or非加熱乳を使い分けるという方法が想定されるかもしれません。

■ とはいえ、加熱乳を一定させるために条件を一定にするのは結構難しいかもしれないとも思いました。

 

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今日のまとめ!

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