以下、論文紹介と解説です。

Zauche LH, et al. Receipt of mRNA Covid-19 Vaccines and Risk of Spontaneous Abortion. New England Journal of Medicine 2021. September 8, 2021 DOI: 10.1056/NEJMc2113891

米国疾病対策予防センター(CDC)のv-safeに登録された新型コロナクチンにおける妊娠データを分析し、妊娠6週から20週未満までの自然流産の累積リスクを調査した。

背景

■ 妊婦は、新型コロナウイルス感染症(coronavirus disease 2019; Covid-19)のリスクにさらされており、妊娠中に重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(severe acute respiratory syndrome coronavirus 2; SARS-CoV-2)に感染すると早産やその他の母体・新生児の有害な転帰のリスクが高まるとされている。

■ 自然流産(妊娠20週未満での流産)は、多く見られる妊娠結果であり、認識されている妊娠の11~22%に影響する(補足の表S1を参照)、妊娠前(最終月経開始日の30日前から14日後まで)または妊娠中にmRNA Covid-19ワクチンを接種した後の自然流産のリスクの推定に有用なデータは限られている。

■ そこで米国疾病対策予防センター(CDC)のv-safeに登録された Covid-19ワクチン妊娠データを分析し、妊娠6週から20週未満までの自然流産の累積リスクを調査した。

 

方法

■ 妊娠前または妊娠20週以前にmRNA Covid-19ワクチンを少なくとも1回接種した単胎妊娠の参加者で、妊娠6週以前に妊娠流産を経験していない者をこの解析に含めた。

■ 生命表を用いて、妊娠週数に応じた自然流産の累積リスクを計算し、適切な打ち切り(すなわち妊娠20週以降に連絡を受けていない妊娠継続中の参加者については、直近の連絡時に打ち切りとし、妊娠20週以前に自然流産以外の妊娠結果(人工流産、子宮外妊娠、奇胎妊娠)を報告した参加者については、その結果の時点で打ち切りとした。

■ また、自然流産の累積リスクは、母親の年齢層に応じた自然流産のリスクに関するデータを用いて、年齢標準化した。

■ 感度分析では、直近の接触が妊娠第1期(妊娠14週未満)で、第2期に連絡が取れなかった参加者全員が、直近の接触の直後に自然流産を経験したという極端な仮定を用いて、自然流産の最大可能リスクを推定した(詳細は補足資料を参照)。

 

結果

■ CDC v-safe Covid-19妊娠登録に登録された計2456名の参加者が、本研究の対象基準を満たした.

■ 妊娠20週時点で妊娠が継続していると報告した参加者は2022人、自然流産を報告した参加者は165人(妊娠14週以前の参加者は154人)、第1期中に直近の連絡を受けた参加者のうち、第2期の追跡調査で連絡が取れなかった参加者は65人、第2期の追跡調査を妊娠20週以前に完了した参加者は188人、20週以前に別の妊娠結果(人工流産、子宮外妊娠、奇胎妊娠)を報告した参加者は16人だった(図S1)。

■ 参加者の多くは、30歳以上(77.3%)、非ヒスパニック系白人(78.3%)、医療従事者(88.8%)だった。

■ 参加者の半数強(52.7%)がBNT162b2ワクチン(Pfizer-BioNTech社)を接種していた(表S2)。

妊娠6週から20週未満の自然流産の累積リスクは、主要な解析(表1)では14.1%(95%信頼区間[CI]12.1~16.1)であり、基準集団に対し母の年齢で標準化を用いた解析では12.8%(95%CI 10.8~14.8)だった

■ 自然流産の累積リスクは母体の年齢とともに上昇した(表S3)。

感度分析では、妊娠第1期に直近の接触があった65人全員が自然流産を経験したという極端な仮定のもとで、妊娠6週から20週未満の自然流産の累積リスクは18.8%(95%CI,16.6~20.9)であり、年齢標準化後の累積リスクは18.5%(95%CI,16.1~20.8)だった

自然流産のリスクの下限と上限を示す2つのヒストリカルコホートのデータと比較すると、この研究における主要分析と感度分析による自然流産の累積リスクは、予想されるリスク範囲内だった(図1)

論文から引用。

 

■本研究の限界は、ワクチンを接種していない妊婦の対照群がないこと、参加者の人種や民族、職業が均質であること、参加者が自発的に登録したこと、参加者自身が報告したデータを使用したこと(一部、レトロスペクティブに収集されたデータを含む)などである。

 

結論

■ しかし今回の結果は、妊娠前または妊娠中のmRNA Covid-19ワクチン接種後の自然流産のリスクは、予想される自然流産のリスクと一致することを示唆している

■ これらの知見は、妊娠中のmRNA Covid-19ワクチン接種の安全性に関する蓄積されたエビデンスに追加される。

 

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mRNAを利用した新型コロナワクチンは、いまのところ流産を増やすというエビデンスはない。

■ 妊娠中のmRNAワクチンと流産に関してはセンシティブなテーマですが、とても重要です。

■ なにより、妊娠中の新型コロナへの罹患自体がおおきなリスクです。

■ 妊娠していない女性に比較して、集中治療室に入院したり、人工呼吸器を使用する可能性が高く、うまれたお子さんも新生児室に入院する可能性が高くなります(Clinical manifestations, risk factors, and maternal and perinatal outcomes of coronavirus disease 2019 in pregnancy: living systematic review and meta-analysis. Bmj 2020; 370:m3320.)

■ ちょうど同じ時期にJAMAでも同様の報告があり( Kharbanda EO, Haapala J, DeSilva M, Vazquez-Benitez G, Vesco KK, Naleway AL, et al. Spontaneous Abortion Following COVID-19 Vaccination During Pregnancy. JAMA 2021.)、すくなくとも、mRNAを利用した新型コロナワクチンは、流産を増やすというエビデンスはないといえそうです。

 

今日のまとめ!

 ✅ mRNAを利用した新型コロナワクチンは、流産のリスクをあげることはないようだ。

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