以下、論文紹介と解説です。

Young BC, et al. Daily testing for contacts of individuals with SARS-CoV-2 infection and attendance and SARS-CoV-2 transmission in English secondary schools and colleges: an open-label, cluster-randomised trial. The Lancet.
Rickard CM, et al. Effect of infusion set replacement intervals on catheter-related bloodstream infections (RSVP): a randomised, controlled, equivalence (central venous access device)-non-inferiority (peripheral arterial catheter) trial. Lancet 2021; 397:1447-58.

英国において、接触者を10日間自己隔離する学校と、『接触者に対し(全員という意味ではない)抗原検査を実施し、陰性と判定されたら登校を継続』という学校で比較して、感染抑制効果に差があるかを検討した。

背景

■ 英国では、学校でのCOVID-19の接触者は、自宅での自己隔離を求められ、重要な教育機会を失っている。

■ その代わりに、毎日の接触者検査を実施し、学校への出席率を高めつつ、同様の感染抑制効果が得られるかどうかを評価した。

 

方法

■ 英国の中学校と高等教育機関を対象に、非盲検、クラスターランダム化対照試験を実施した。

■ 学校は、学校にいるCOVID-19接触者を10日間自己隔離する方法(対照)と、イムノクロマトグラフィー装置(lateral flow device; LFD)検査陰性の接触者を学校に残留させ、7日間毎日任意でLFD検査を行う方法(介入)に、1対1でランダム化した。

■ ランダム化は、学校の種類と規模、6年生の有無、寮生の有無、フリーの学校給食を受ける生徒の率によって層別化された。

■ 介入や分析の際には、グループ分けのマスキングは行われなかった。

■ 全生徒や全教職員を対象とした主要アウトカムは、COVID-19に関連した学校の欠席と、症状がありPCRで確認されたCOVID-19であり、学校内感染を推定するために、地域社会の感染率で調整した(非劣性マージン<50%相対的増加)。

■ 解析は、準ポアソン回帰を用いてintention-to-treatで行われ、合併症の平均因果効果(average causal effect;CACE)も推定した。

■ 本試験はISRCTNのレジストリ、ISRCTN18100261に登録されている。

 

結果

■ 2021年3月18日から5月4日に、204校が同意を経て、3校がそれ以上参加しないことを決めた。

■ 201校がランダム化され(対照群99校、介入群102校)、10週間の研究(2021年4月19日~5月10日)が行われ、事前に指定された中止日(2021年6月27日)まで続けられた。

■ 対照群76校、介入群86校が積極的に参加した。

■ 国のデータを追加することで、非参加校のほとんどを主要なアウトカムの分析に含めることができた。

■ 介入群の5763人の接触者のうち2432人(42-4%)が毎日の接触検査に参加した。

PCRで確認されたCOVID-19の症候性感染は、対照群では7,782,537日-at-risk(週10万人当たり59.1)に657件、介入群では8,379,749日-at-risk(週10万人当たり61.8)に740件だった(intention-to-treatにおける調整発生率比[aIRR]0.96[95%CI 0.75-1.22]、p=0.72;CACE aIRR 0.86[0.55-1.34])

論文から引用。

図サムネイルgr3

■ 学生と職員では、対照群では3,659,017人・学校日に59,422人(1~62%)、介入群では3,845,208人・学校日に51,541人(1~34%)のCOVID-19関連の欠席があった(intention-to-treatにおける調整済み発生率比0.80[95%CI 0.54-1.19]; p=0-27; CACE aIRR 0.61[0.30-1.23])。

論文から引用。

図サムネイルgr4

 

解釈

■ 学校での接触者に対する毎日の接触検査は、COVID-19 感染の制御において自己隔離と比較して非劣性であり、両アプローチによる生徒や職員の症候のあるCOVID-19感染率は同等だった。

■ 学校内の接触者の感染率は低く、陽性となる学校内の接触者は非常に少なかった。

■ 毎日の接触者検査は、学校での曝露後の自宅隔離に代わる安全な方法として実施を検討すべきである。

 

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検査を無制限に広げるという意味ではまったくないが、できるだけ学校生活を続ける方策として有用な方法かもしれない。

■ まず前提条件として、学校は感染拡大のリスクではあるものの、学校内の接触者感染の率は低いともいえます。

 

■ そして、接触者の自己隔離だけでなく、『接触者の抗原検査を1週間行う』という方法も有効な方法といえるという結果でした。

■ ただし、この研究をもって検査を『無制限に』ひろげることが正しいアプローチだという意味になりません。

■ しかし、子どもたちの集団での生活を、すこしでも緩和できるかもしれないという結果でもあるでしょう。

 

■ なお、学校の教員の方々の感染リスクは思ったほど高くはないのではないかという研究結果も、最近発表されています(繰り返しになりますが、リスクが”ない”といっているわけでもありません)(Risk of hospital admission with covid-19 among teachers compared with healthcare workers and other adults of working age in Scotland, March 2020 to July 2021: population based case-control study. BMJ 2021; 374:n2060.)。

 

今日のまとめ!

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