以下、論文紹介と解説です。

Falsey AR, et al. SARS-CoV-2 Neutralization with BNT162b2 Vaccine Dose 3. New England Journal of Medicine 2021.

18~55歳11人と65~85歳12人に、ファイザー社新型コロナワクチン2回目の接種から7.9~8.8カ月後に3回目の接種を行い、抗体価の推移を検討した。

背景・方法

■ 我々は、BNT162b2(Pfizer-BioNTech)の30μgを21日間隔で2回投与するランダム化プラセボ対照第1-2-3フェーズ試験を実施した(ClinicalTrials.gov NCT04368728.)。

■ これらのワクチンは、大部分の副作用は軽度であり、2回目の接種の7日後から約2ヶ月後までの新型コロナ(Covid-19)に対し95%の有効性を示した。

■しかし有効性は2回目の投与の4か月後から約6か月後までに84%まで低下した。

■ ワクチン承認後、野生株に代わりウイルスの変異株が登場し、現在は感染力の高いB.1.617.2(デルタ)変異株が主流となっている。

■ 重症化、入院、死亡に対するワクチンの有効性は依然として高いが、免疫力の低下やウイルスの多様化により、3回目のワクチン接種が必要となる可能性がある。

■ そこで、米国で実施された第1フェーズ試験において、18~55歳の参加者11人と65~85歳の参加者12人に、2回目の接種から7.9~8.8カ月後にBNT162b2を30μg3回目の接種を行った

 

■ この試験の詳細は、表S1および補足資料、試験プロトコルに記載されており、これらはいずれもNEJM.orgでこのレターの全文とともに入手可能である。

■ 投与3回目の局所反応と全身性イベントは、軽度から中等度のものが多く、投与2回目と同様だった(Figs.S1およびS2)。

■ また、投与3回目の1カ月間に自発的に報告された有害事象はなかった。

■ 野生型(USA-WA1/2020)の新型コロナウイルス(severe acute respiratory syndrome coronavirus 2; SARS-CoV-2)と、組換えβ変種株(野生型の遺伝子にβ変種のスパイク遺伝子を導入したもの)に対する50%血清中和力価を、既述の方法で測定した。

■ 血清検体は、1回目の接種前、2回目の接種の7日後と1か月後、接種3回目前と7日後と1か月後に採取した(図1A)。

論文より引用(図1A)。
BNT162b2を2回および3回接種投与した後の中和反応。

 

結果

■ これらのデータから、4つの重要な結論が得られた。

■ まず、2回目の接種7日後から3回目の接種前までの約8カ月間に、第1フェーズ試験に参加したサブグループのSARS-CoV-2中和幾何平均抗体価(geometric mean titers; GMT)は,第2-3フェーズ試験参加者のワクチン効果の低下よりも急速に低下した。

■ 第2に、3回目の接種から1カ月後までに、野生型ウイルスに対する中和GMTは、2回目の接種から1カ月後のGMTの5倍以上(18〜55歳)、7倍以上(65〜85歳)に上昇した。

■ 第3に、β変異に対する中和GMTは、3回目の接種以降、野生型ウイルスに対するGMTよりも増加し、接種2回目の15倍以上(若年層)、20倍以上(高齢層)となり、野生型ウイルスとβ変異を中和する差が縮まった

■ 第4に、中和GMTは、接種2回目のの7日後から1カ月後までは減少したが、接種3回目の7日後から1カ月後までは増加した。

■ 接種3回目の中和幅とGMTの上昇(変異株に対する中和)というパターンは、野生型の遺伝子にデルタバリアントのスパイクタンパクを持つ組換えウイルスに対する中和GMTの測定でも見られた。

■ 接種3回目から後の1ヶ月間の中和GMTの幾何学的平均比(デルタバリアント/野生型)は、若年層で0.85、高齢層で0.92だった(図1B)。

論文より引用。

接種3回目前から接種3回目後の1ヵ月における野生型ウイルスに対するGMFRは、若年層で25.7(95%信頼区間[CI]12.4~53.3)、高齢層で49.4(95%CI29.2~83.3)だった。
また、β変異に対する対応するGMFRは、それぞれ38.7(95%CI19.8~75.5)、78.3(95%CI40.7~150.6)だった。

 

解釈

■ 中和の大きさと範囲の増加、体液性反応の速度の改善は、初回免疫後に接種されたプレパンデミックインフルエンザワクチンのブースター用量でも観察されている。

BNT162b2の安全性と免疫原性は、2回の初回接種から7~9カ月後に3回目の接種を行うことで、予防効果を持続させ、予防効果の幅をさらに広げることができることを示唆している。

 

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3回目の接種の有効性はあきらかになりつつあるが、『ワクチンの不平等』もテーマとして浮上している。

■ 同時に発表された報告では、イスラエルからのリアルワールドの報告です(Bar-On YM, Goldberg Y, Mandel M, Bodenheimer O, Freedman L, Kalkstein N, et al. Protection of BNT162b2 Vaccine Booster against Covid-19 in Israel. New England Journal of Medicine 2021.)。

 

■ そして9月17日に厚労省は、医療従事者を想定したブースター接種を容認しました。

ワクチン3回目接種、厚労省が容認 早ければ医療従事者で12月にも

■ WHOは、3回目の接種に慎重な姿勢を示していますが、これは3回目の接種にリスクがあるなどとしているわけではなく、『発展途上国では最初の接種がすすんでもいないのに、先進国が3回目の接種をはじめていいのか』という議論が下敷きにあります。

■ この『ワクチン不平等』に関するテーマは、今後も議論する必要があるでしょう。

 

■ しかし一方で今後の出口戦略を考えていくならば、ブースター接種は早々に実施することもまた、想定していかなければならないでしょう。

 

今日のまとめ!

 ✅ ファイザー社新型コロナワクチンは、3回目接種により抗体価は大きく上昇する。

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