以下、論文紹介と解説です。
Berthon BS, et al. The effects of increasing fruit and vegetable intake in children with asthma: A randomized controlled trial. Clinical & Experimental Allergy 2021; 51:1144-56.
喘息と喘息の増悪の既往があり,普段野菜や果物(F&V)摂取量が少ない(3食/日以下)小児(3~11歳)を、6ヵ月間、介入群(F&V高頻度食)33人、対照群(通常食)34人にランダム化し、6ヶ月間の全身性炎症や喘息発作の頻度を比較した。
背景
■ 果物と野菜を多く含む食事(fruit and vegetable; F&V) は、成人では喘息の増悪を抑制するが、小児ではこれまで検討されていなかった。
目的
■ 小児の喘息患者において、6カ月間の高F&V食が初回の喘息増悪までの期間に及ぼす影響を、並行群間無作為化対照試験で検討する。
方法
■ 喘息と喘息の増悪の既往があり,普段のF&V摂取量が少ない(3食/日以下)小児(3~11歳)を、6ヵ月間、介入群(F&V高頻度食)または対照群(通常食)にランダム化した。
対照群の被験者は、いままでの食事(3食以下)を継続し、水溶性食物繊維や抗酸化物質の少ない炭水化物系食品(パン、米、パスタ、シリアル)が毎月宅配された。
カウンセリングは、おやつや食事の際に子どもたちに提供する果物や野菜の種類、色、量を増やすための実践的な提案が含まれていた。
じゃがいもとジュースは、果物と野菜の総摂取量にはカウントせず。
両群とも、1日あたりのフルーツジュースの摂取量を1/2カップ以下にし、ビタミン剤、栄養補助食品、プロバイオティクスの使用を避けるよう指示。
■ 主要アウトカムは、医学的介入を必要とする最初の増悪までの期間とした。
■ 副次評価項目は、増悪率、肺機能、血漿TNF-α、CRP、IL-6、糞便中の微生物叢、末梢血単核細胞(PBMC)のヒストンデアセチラーゼ(histone deacetylase; HDAC)活性、Gタンパク質共役型受容体(GPR)41/43、HDAC(1-11)の発現などとした。
結果
■ 2015年9月から2018年7月までに、小児67人がランダム化された。
■ F&V摂取量(変化量の差(△):3.5食/日、95%CI:[2.6~4.4]; p< 0.001)、血漿中の総カロテノイド(△:0.44μg/ml [0.19~ 0.70] ; p = 0.001)は、6カ月後に増加した(介入群 vs 対照群)。
■ 最初の増悪までの期間(HR 0.81; 95%CI [0.38~1.69]; p=0.569; 対照群 vs 介入群)、増悪率(IRR 0.84; [0.47~1.49]; p=0.553; 対照群 vs 介入群)は、両群間で同程度だった。
■ per-protocol解析では、介入群と対照群で気道反応のZスコアが上昇し(X5∆:0.76 [0.04~1.48] ;p = 0.038; X20∆ 0.93 [0.23~ 1.64]; p = 0.009)、便中微生物叢の変化が観察されたが、全身の炎症や分子メカニズムには群間差はなかった。
■ 対照群は、CRPとHDAC酵素活性が増加し、GPR41の発現が減少した。
■ 介入に起因する有害事象は認められなかった。
結論と妥当性
■ 高F&V食は、6ヶ月間の介入期間中の喘息増悪には影響しなかったが、喘息のある児の肺機能を改善し、全身の炎症を防ぐ戦略として、さらなる検討が必要である。
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果物と野菜を多く含む食事は、気道炎症を改善するかもしれないが、喘息発作を大きく減らすほどの効果はないようだ
■ 果物や野菜の摂取は炎症を抑制する可能性が示唆される、という結果でした。
■ 機序はさまざま想定されていますが、果物や野菜に含まれる抗酸化物質であるリコピンがNF-κB活性を抑制することや水溶性食物繊維の摂取により、腸内細菌によるの短鎖脂肪酸を増加させて免疫細胞におけるGPR41/43の活性化15とHDAC酵素活性の阻害を介して抗炎症作用をもたらす…などが考えられています。
■ 現実的に、発作自体を抑制していませんし、この研究結果をもって、果物や野菜の摂取を強くすすめることは難しいかもしれませんが、大事な視点でもあるでしょう。
■ とはいえ、『野菜や果物を定期的に食べることは大事』ではありますが、『野菜や果物を定期的に食べれば喘息がものすごく良くなる』というわけにはいきませんよね。
■ あくまで補助的な…という感じですね。
今日のまとめ!
✅ 野菜や果物を定期的に食べると、気道の炎症は改善するが、喘息発作を減らすほどの効果はないようだ。
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