以下、論文紹介と解説です。

Sievers S, Rohrbach A, Beyer K. Wheat-induced food allergy in childhood: ancient grains seem no way out. Eur J Nutr 2020; 59:2693-707.

小麦に感作された1~11歳の児6人、小麦に感作していない3~13歳のアトピー患者5人、生後3カ月~5歳の非アトピー患者6人の血清をもちいて、古代小麦と現代小麦に対するIgE抗体の反応性を確認した。

目的

■ 小麦は小児期の食物アレルギーの原因として頻繁に取り上げられている。

■ 特にメディアでは、古代穀物の消化性の良さやアレルゲン性の低さが繰り返し強調されている。

■ そこで、古代小麦関連の穀物は現代小麦よりもアレルゲン性が低いのかという疑問を対象とした。

 

方法

■ スペルト小麦、エインコーン小麦、エマー小麦、デュラム小麦、デュラム軟質小麦粉、Tritordeum、パン用小麦の各品種のタンパク質を電気泳動で分離した。

■ 小麦に感作された1~11歳の児6人(小麦特異的IgE 22 kUA/l)のプール血清を用いてイムノブロットを行った。

■ 対照として、小麦に感作していない3~13歳のアトピー患者5人(小麦特異的IgE 0.11 kUA/l)と、生後3カ月~5歳の非アトピー患者6人(小麦特異的IgE 0.06 kUA/l)のプール血清を用いた。

■ Coomassie染色したゲルとイムノブロットにおける曲線下面積(AUC)を測定し、関連を検討した。

 

結果

水溶性/塩溶性タンパク質のパターンは品種間で非常に類似していた

■ エインコーン品種では、α-アミラーゼ/トリプシンインヒビター(amylase/trypsin inhibitor; ATI)に相当するタンパク質バンドが1本存在しなかった。

■ 水不溶性タンパク質画分は、品種間で大きく異なっていた。

IgE抗体は、小麦や小麦関連古代穀物のいずれにおいても、すべてのタンパク質画分において多数のタンパク質と結合していた

 

結論

■ 小麦に感作された患者は、Triticum属の現代小麦および古代小麦関連品種の両方に対して、有意にIgE結合した。

■ したがって、古代穀物が小麦アレルギー患者のリスクを一概に低減するとは言えないと考えられる。

■ しかし、ATIに感作されただけの少数の人は、エインコーンの摂取から恩恵を受ける可能性がある。

 

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『古代小麦』は、現代小麦と同様に、アレルギーを起こす可能性がある。

■ 同様に、『昔の卵の品種はアレルゲン性が低い』『有機の餌、平飼いだとアレルゲン性が低い』などとうたう情報などを見かけます。

■ しかし、『古代(?)卵』のアレルゲン性はとくに低くないという報告もありますし(PLoS One 2011; 6:e19062.)、自然農法でそだてた卵を『アレルギー患者が食べられる』とするのは問題があるとして消費者庁から注意喚起がでています。

【消費者庁】「アレルギー患者が食べられる」と称する卵の販売サイトに関する注意喚起について

■ まずは、アレルギー専門医にご相談ください。

 

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今日のまとめ!

 ✅ 古代小麦は、アレルゲン性が低くはないようだ。

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