以下、論文紹介と解説です。

Alves C, Saleh A, Alaofè H. Iron-containing cookware for the reduction of iron deficiency anemia among children and females of reproductive age in low- and middle-income countries: A systematic review. PLoS One 2019; 14:e0221094.

鉄を含有した調理器具の鉄欠乏症や鉄欠乏性貧血への効果を検討した11研究のシステマティックレビューを実施した。

背景と目的

低・中所得国(low- and middle-income countries; LMICs)における鉄欠乏症(iron deficiency; ID)鉄欠乏性貧血(iron deficiency anemia; IDA)の改善に対し、鉄鍋やインゴットの有効性に関するエビデンスは限られている。

■ 本システマティックレビューの目的は、LMICsの小児と妊娠可能年齢の女性(females of reproductive age; FRA)における鉄を含有した調理器具の鉄欠乏症や鉄欠乏性貧血への効果に関するエビデンスを要約することだった。

 

方法

■ 検索は、PubMed、Embase、Cochrane Library、Web of Science、Scopus、CAB Abstracts、POPLINE、LILACS、ProQuest Dissertations & Theses Global、WHO ICTRP、ClinicalTrials.govで2019年5月に最終的に行った。

■ また,ハンドサーチも行った。

■ 選択基準は、小児(4か月~11歳)と妊娠可能年齢の女性(12歳~51歳)を対象に、鉄を含む調理器具の影響を研究したランダム化対照試験(RCT)、準実験的研究、対照群を持つ観察研究などとした。

 

結果

■ 11件の研究がレビューの対象となった。

ヘモグロビンおよび/または鉄指標の統計的に有意な増加(p < 0.05)は、鍋に関する研究の50%(8件中4件)で観察され(Hbの相対的変化/平均値の差:-0.4~1.20 g/dL)、インゴットに関する研究の33.3%(3件中1件)(Hbの相対的変化/平均値の差:0.32~1.18 g/dL)で観察された

肯定的な結果(p<0.05)は、小児では50%(8件中4件)、FRAでは28.6%(7件中2件)の研究で観察された

■ アドヒアランス率は、鍋の毎日の使用では26.7~71.4%、インゴットの毎日の使用で90~93.9%だった。

 

結論

■ 十分なコンプライアンスがあれば、鉄を含む調理器具は、小児のIDAを減少させる手段となり得ることが示唆された。

■ 鉄分を含む調理器具の潜在的な利点は、比較的費用対効果が高いことと、他の介入策と補完的に組み合わせることができることである。

■ しかし、この介入の有効性と安全性については、さらなる研究が必要である。

 

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『鉄玉子』は、著しい鉄欠乏があれば一部の方に有効かもしれない。しかし、その鉄の量はきわめて微量であることも承知しておく必要がある。

■ 今年になって、追加の論文をまとめたシステマティックレビューもあるようです(Nepal Journal of Epidemiology 2021; 11:994.)。

■ 鉄の食事摂取基準は、生後6~11ヶ月で5mg、12~14歳で11.5mgとされています。

鉄の摂取量の目安と充足率について

■ 『鉄卵』は、1つを水1リットルにいれて沸かすと沸騰時で0.042mg、5分後には0.069mgの鉄が溶出するそうです。

■ 「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」の違いでその理由を説明しようとしている記事もありますが、それでも5~6倍程度の吸収率の違いだそうで、少ない量であることは間違いありません。

吸収されやすい鉄と吸収されにくい鉄

■ もともと鉄がものすごく不足しているときは、少量の鉄でもある程度の効果があることは日常診療でも経験されますし、そのような効果があるのかな、と思っています。

■ そのため、所要量と鉄玉子からの溶出量に大きな差があるといえるものの、いくらかの効果は期待できるとは言えるのかもしれません。

■ 『おばあちゃんの知恵』の側面でいえば、栄養状態がわるく肉類をあまり食べられなかった時代は、有効であったとも想像しています。

 

■ なお、料理の方法に関しても配慮を要するという考え方もあります。

■ 鉄鍋で肉を調理すると、野菜や豆類よりも鉄分が増加することがあきらかになっているようです。ヘム鉄に比べて吸収率の低い非ヘム鉄が豆類や野菜に含まれていることが考えられています(The Lancet. 1999;353(9154):712-716. )

■ また、鉄インゴットを使用したレモン果汁入りの煮汁では、鉄の含有量が多くなるという結果もあります(Tropical Medicine & International Health. 2011;16(12):1518-24.)。

■ 鉄玉子をメインに据えるのではなく、料理などの相性も考えながら摂取していくといいのかもしれませんね。

 

■ とはいえ、全体として、効果があったとする報告の率はそこまで多くなく、個人的には『効果があればいいですね』という当初のお話にまとまるのではないかと思っています。

 

今日のまとめ!

 ✅ 鉄玉子は、著しい鉄欠乏の食事の場合に、上乗せの効果は期待できるかもしれない。

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