以下、論文紹介と解説です。

Schoos A-MM, et al. Increasing severity of early-onset atopic dermatitis, but not late-onset, associates with development of aeroallergen sensitization and allergic rhinitis in childhood. Allergy; n/a.

COPSAC2000コホートから、早期発症アトピー性皮膚炎(1歳未満発症)、後期発症のアトピー性皮膚炎(1~6歳発症)により、その後の吸入アレルゲン感作やアレルギー性鼻炎の発症と関連するかを検討した。

背景

■ アレルギー性疾患の発症には、皮膚のバリア機能の低下によるアレルゲンへの早期暴露が関与していると考えられている。

■ そこで、早期発症した重症アトピー性皮膚炎が、吸入アレルゲン感作やアレルギー性鼻炎の発症と関連するという仮説を立てた。

 

方法

■ Copenhagen Prospective Studies on Asthma in Childhood2000(COPSAC2000)のリスクのある母児コホートからの小児368人を対象とした。

■ アトピー性皮膚炎は、Hanifin&Rajkaの基準に基づいてプロスペクティブに診断され、重症度はScoring Atopic Dermatitis (SCORAD)指標を用いて評価された。

早期発症のADは発症1歳未満、後期発症のADは発症1~6歳と定義した。

■ アレルゲン感作およびアレルギー性鼻炎は、6~7歳および12歳で診断した。

■ 早期発症および後期発症のADとアレルギーのエンドポイントとの関連性は、一般推定方程式(general estimating equations; GEE)モデルを用いて、両時点における全体のオッズ比(odds ratios; OR)を算出した。

 

結果

早期発症のAD(有り/無し)および重症度(SCORAD)は、小児期の吸入アレルゲン感作の有無と関連しており、GEE OR = 1.68 [1.08; 2.62](p = 0.02)、1.08 [1.03; 1.12](p < .001)だった

■ 一方、後期発症ADは感作に対しボーダーライン上の有意な関連を示し、後期発症ADの重症度は関連性を示さなかったGEE OR= 1.65 [0.92; 2.94](p = .08)、1.01 [0.97; 1.06]( p = .55)

■ アレルギー性鼻炎についても同様の傾向が見られ、早期発症ADとアレルギー性鼻炎に有意な関連性が認められた。

■ すなわち、GEE OR = 1.56 [1.01; 2.41]( p = .04)、 重症度; GEE OR = 1.09 [1.05; 1.13](p < .001),一方で、後期発症ADは、関係がなかった。\

■ 早期発症と後期発症のADの重症度による感作と鼻炎への影響は、有意に異なっていた

■ すなわち、感作におけるp-interactionは .03であり、アレルギー性鼻炎における p-interactionは < .01だった。

 

結論

■ 早期発症のADの重症度は、後期発症のADではなく、小児期以降の吸入アレルゲンの感作やアレルギー性鼻炎と関連する。

 

スポンサーリンク(記事は下に続きます)



 

1歳未満でのアトピー性皮膚炎の重症度は、その先のアレルギーマーチにつながる可能性があるが、1歳以降の発症の場合、そのリスクが低くなるかもしれない。

■ この報告では、1歳未満のアトピー性皮膚炎の重症度がその先の感作やアレルギー性鼻炎のリスク上昇に影響するという結果でした。

■ 低年齢で感作がはじまると、急速に感作の程度が上昇することはすでに先行研究もありますし、この結果は理解しやすいです。

 

■ 一方で、保湿剤によるアトピー性皮膚炎の発症予防に関し、感作まで減らし得た研究はすくなく、皮膚の介入のみで感作まで減らしうるかに関しては今後さらに検討を要します。

■ 個人的には、十分な量のモイスチャライザーを定期塗布すると感作も予防し得たというPEBBLES Pilotスタディの結果が参考になると思っていますが、まだデータが不足しているといえます。

 

今日のまとめ!

 ✅ 1歳未満でのアトピー性皮膚炎の重症度は、1歳以降に発症したアトピー性皮膚炎より、感作の程度やアレルギー性鼻炎の発症に関連する。

このブログは、私の普段の勉強の備忘録やメモであり、細かい誤字脱字はご容赦ください。基本的に医療者向けです。

知識の共有を目的に公開しておりますが、追加して述べる管理人の意見はあくまでも個人としての私見です。
所属するいかなる団体の立場も代表するものではありませんし、すべての方に向いているという情報でもありません。予めご了承いただきたく存じます。

このブログの『リンク』は構いません。
しかし、文章やアイデアを盗用・剽窃・不適切な引用したり、許可なくメディア(動画を含む)に寄稿することはご遠慮ください。
クローズドな場での勉強会などに使用していただくことは構いません。
Instagram:2ヶ月で10000フォロワーを超えました!!!

Xでフォローしよう