以下、論文紹介と解説です。
Laughter MR, et al. The global burden of atopic dermatitis: lessons from the Global Burden of Disease Study 1990–2017*. British Journal of Dermatology 2021; 184:304-9.
1990年から2017年の世界疾病負担調査における、アトピー性皮膚炎の疾病負担率を調査した。
背景
■ 世界疾病負担(Global Burden of Disease: GBD)調査は、世界の疾病関連の罹患率や死亡率を調査するために毎年更新される資料である。
目的
■ アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis; AD)について、1990年のGBDプロジェクト開始から2017年までのデータを含めた負担率の推計結果を提示する。
方法
■ アトピー性皮膚炎の負担に関するデータをGBD Studyから入手した。
結果
■ アトピー性皮膚炎(Atopic dermatitis; AD)は、非致死性疾患の中で15位であり、障害調整生存年数(disability-adjusted life-years; DALYs)で測定すると、皮膚疾患の中で最も疾病負担が大きかった。
■ 全体として、1990年のADの世界のDALY率は121[95%不確定区間(uncertainty interval; UI)65.4-201]で、2017年も123[95%UI 66.8-205]と同程度だった。
■ ADのDALY率が最も高かったのは、スウェーデン(327; 95%UI 178-547)、英国(284; 95%UI 155-478)、アイスランド(277; 95%UI 149-465)の3ヶ国で、ウズベキスタン(85.1; 95%UI 45.2-144)、アルメニア(85.1; 95%UI 45.8-143)、タジキスタン(85.1; 95%UI 46.1-143)が最下位だった。
結論
■ 世界のADの有病率は、1990年から2017年まで安定なままだった。
■ しかし、ADの年齢層別の分布は、乳幼児期にもっとも高いのピークがあり、若年層では有病率が減少し、中高年層では第2のピークがあるという二峰性の曲線を示した。
■ また、国の国内総生産(gross domestic product; GDP)と疾病負担には、中程度の正の相関があった。
■ GBDのデータは、ADの世界的な負担が大きいことを裏付けている。
■ ADの負担は1990年以降安定していたが、地理的には大きなばらつきがある。
■ ADは、1990年以降、安定しているものの、地理的には大きなばらつきがあり、豊かさに関連したライフスタイルが重要な要因であると考えられる。
■ しかし、疾患負荷の地理的および年齢的な変化をよりよく理解するためには、紫外線暴露などの環境リスク要因を組み込むために、GBDの手法をさらに発展させる必要がある。
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アトピー性皮膚炎の疾病負担は、低くない。
■ アトピー性皮膚炎の疾病負担率が、皮膚疾患の中でたかいものであることが示されています。
■ 近年、アトピー性皮膚炎の治療は格段に進歩しつつある、その治療がひろく行き渡るようにアップデートしていく必要性があるだろうと思われます。
今日のまとめ!
✅ アトピー性皮膚炎の負担率は非致死性疾患の中で15位であり、障害調整生存年数において皮膚疾患の中で最も疾病負担が大きかった。
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