以下、論文紹介と解説です。
Ha J, et al. Ten-Year trends and prevalence of asthma, allergic rhinitis, and atopic dermatitis among the Korean population, 2008–2017. Clinical and experimental pediatrics 2020; 63:278.
2008年~2017年の韓国全国横断調査(National Health and Nutrition Examination Survey; 国民健康栄養調査)により、アレルギー疾患の有症率の推移を検討した。
背景
■ 韓国におけるアレルギー疾患および喘息の年齢層別の傾向については、大きな疑問が残されている。
目的
■ 2008年から2017年までの韓国における喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎の推定有病率と10年間の傾向を明らかにする。
方法
■ 10年間(2008年~2017年)にわたる全国横断調査(National Health and Nutrition Examination Survey; 韓国国民健康栄養調査)で、乳幼児2,131人、就学前児童4,352人、学童期児童12,919人、成人44,200人、高齢者21,404人を含む韓国国民の代表的なサンプル(n=85,006)を調査した。
結果
■ 2016年から2017年において、喘息の推定有病率は、乳幼児で0.9%、就学前児童で2.3%、学童で4.1%、成人で2.3%、高齢者で4.1%だった。
■ アレルギー性鼻炎の推定有病率は、それぞれ9.0%、20.2%、27.6%、17.1%、6.9%だった。
■ また、アトピー性皮膚炎の推定有病率は、それぞれ5.9%、11.3%、14.6%、3.9%、1.6%だった。
■ 10年間の傾向として、乳幼児、就学前児童、高齢者の喘息有病率が有意に減少していた。
■ また、乳幼児と就学前児童のアトピー性皮膚炎の有病率が有意に減少した(いずれもP<0.05)。
論文より引用。韓国の2歳未満におけるアレルギー疾患の有症率。
論文より引用。韓国の2-5歳におけるアレルギー疾患の有症率。
■ また、アレルギー性鼻炎は学童・成人・高齢者で、アトピー性皮膚炎は学童・高齢者で、それぞれ有意に増加していた(いずれもP<0.05)。
結論
■ これらの結果は、韓国におけるアレルギー疾患の年齢層別の疫学に対する理解を深めるとともに、さまざまな年齢層におけるアレルギー疾患を予防するため、それぞれの年齢層に合わせた正確な戦略を開発する必要性を示唆するものである。
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理由はあきらかではないが、別のレビューではスキンケアの開始が理由のひとつとなっていた。
■ アトピー性皮膚炎の年齢ごとの推移に関し、環境や社会の変化によってより説明可能だと考察されていましたが、これだけではなんとも言えません。
■ 別の総論に、『新生児期からの保湿剤』が上げられています( Prevention of Atopic Dermatitis. In: Practical Insights into Atopic Dermatitis: Springer; 2021. p. 243-50.)。個人的には、その影響はあるのではないかと考えています。
■ ただし、その『保湿剤の性能』などには注意が必要ではないかと考えるようにもなっています。
■ さらに検討を要するでしょう。
今日のまとめ!
✅ 日本だけでなく、韓国でもアトピー性皮膚炎の有症率が下がり始めている。
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