以下、論文紹介と解説です。

Wärnberg Gerdin S, et al. Impaired skin barrier and allergic sensitization in early infancy. Allergy 2021 ; doi: 10.1111/all.15170. Online ahead of print.

ノルウェーとスウェーデンで実施されたPreventADALL試験に参加した児をフォローアップし、生後3ヶ月時の湿疹やドライスキン、TEWLが生後6ヶ月時の感作を予測するかを検討した。

背景

■ 生後6ヵ月間のアレルゲン感作を予測する要因は十分判明していない。

■ そこで、生後3ヶ月時の湿疹、ドライスキン、経皮水分蒸散量(TEWL)高値が、生後6ヶ月時のアレルゲン感作と関連するかどうかを明らかにし、次に、これらの特性が生後3ヶ月から6ヶ月までの感作を予測するかどうかを確立することを目的とした。

 

方法

■ ノルウェーとスウェーデンの集団ベースのPreventADALL出生コホートの1,994名の乳児を対象に、生後3ヶ月時点で、頬部および/または伸側に湿疹とドライスキンがあるかどうかを評価した。

研究フローチャート。

画像

■ TEWLが上位4分の1(>9.4 g/m2/h)と定義される皮膚バリア機能の低下と、830人のアレルゲン特異的IgE値が0.1 kUA/L未満であることを確認した。

■ 6ヶ月時に、食物アレルゲン(卵、牛乳、ピーナッツ、小麦、大豆)もしくは吸入アレルゲン(シラカバ、オオアワガエリ(チモシーグラス)、犬、猫)に対する感作を、皮膚プリックテストの膨疹径が陰性コントロールよりも2mm以上大きいことで評価した。

 

結果

■ 乳幼児1,994人のうち198人(9.9%)に何らかの感作が認められ、そのほとんどが食物アレルゲンに対するものだった(177人; 8.9%)。

3ヵ月後の湿疹、ドライスキン、TEWL高値は、6ヵ月時の感作のリスクを増加させた

調整オッズ比は、それぞれ4.20(95%CI 2.93-6.04)、2.09(95%CI 1.51-2.90)、3.67(95%CI 2.58-5.22)だった

論文から引用。(A)生後6ヶ月時の感作に対し、Eczema(湿疹≒アトピー性皮膚炎)、ドライスキン、TEWL高値が関連する。(B)生後3ヶ月時に感作がなくとも関連する。
(C)食物アレルゲン感作に関しても同様。

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■ 湿疹は感度55.6%、特異度68.1%、ドライスキンは感度65.3%、特異度57.3%、TEWL高値は感度61.7%、特異度78.1%で感作を予測した。

 

結論

■ 生後3ヵ月の湿疹、ドライスキン、TEWL高値は、生後6ヵ月のアレルゲン感作を予測した。

 

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保湿剤によるアトピー性皮膚炎発症予防というテーマは、さらに『誰を』『どのように』予防するかということを検討するフェーズに移ってきている。

■ PreventADALL試験はノルウェー・スウェーデンで行われたランダム化比較試験です。

■ 保湿剤によりアトピー性皮膚炎の予防ができるか?というテーマでおこなったのですが、失敗に終わっています。

■ その理由は別の記事をみていただくとして、アトピー性皮膚炎は多様な病態が混在している疾患であり、保湿剤による発症予防も『どのような手法がより有効か』ということを考えるフェーズに入ってきています。

■ その中で、TEWL高値という点は、さらに注目されてくるのではないかと予想されます。

 

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今日のまとめ!

 ✅ 生後3ヶ月時のTEWL高値、アトピー性皮膚炎、ドライスキンは、その後短期間での感作につながる。

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