以下、論文紹介と解説です。

Matsumoto M, et al. Factors associated with the development of oral allergy syndrome: A retrospective questionnaire survey of Japanese university students. Allergology International 2021; 70:458-62.

大学1年生2688名を対象にアンケート調査を実施し、口腔アレルギー症候群(OAS)の疫学的特徴を検討した。

背景

口腔アレルギー症候群(Oral allergy syndrome; OAS)は,IgE依存性食物アレルギーである。

■ 原因となる抗原を摂取すると、ほとんどの場合は口腔粘膜の違和感などの局所症状を呈し、少数はアナフィラキシーを起こすことがある。

■ しかし、健常者を含めたOASの有病率については調査されていない。

■ そこで、日本人の大学生を対象に質問紙調査を実施した。

 

方法

■ 大学1年生2688名を対象に、マークシート方式のアンケート調査を実施し、OASの疫学的特徴を検討した。

 

結果

『口腔アレルギー症候群』という用語を知っている学生はわずか2.7%だった。

論文から引用。全学生、OASのある学生、OASのない学生におけるOASの認知度。

143人(5.3%)の学生がOASに罹患していた。

論文から引用。OASを起こす食品。

OASは、アレルギー性鼻炎(allergic rhinitis; AR)(OR 3.8,95%CI 2.7-5.5),アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis; AD)(OR 4.6,95%CI 3.3-6.6)、気管支喘息(bronchial asthma; BA)(OR 3.0,95%CI 2.0-4.5)などの他のアレルギー疾患と有意な関連があった。

論文から引用。 アレルギー疾患(AD、AR、BA)や増悪因子がOASの発症に及ぼす影響。

■ OASの発症年齢は、0歳と10歳に二峰性のピークがあり、後者のピークはARの発症年齢のピークと一致した。

論文から引用。性別や背景因子によるOASの発症年齢の分布。

 

結論

■ 今回の調査では、OASの認知度が低く、適切な治療や発症予防が困難であると考えられた。

■ 今回の調査では、OASと他のアレルギー疾患、特にARとの関連が確認され、OASがアレルギーマーチに関与していることが示唆された。

■ また、OASの抗原に対する感作が、ARの抗原に対する感作と同時期に起こっていたことも新規の知見である。

■ これらの結果は、医療関係者がOASを診断し、アナフィラキシーなどのOASに関連する症状を予防するための生活ガイドラインを作成するのに役立つと考えられる。

 

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OASに関し、アレルギー性鼻炎が先行して発症するPFASが問題となっている。

■ レトロスペクティブな検討なので、原因と結果の齟齬、そしてリコールバイアスの可能性もありますが、普段の臨床の印象と同じような結果と言え、納得できる結果です。

■ もともと口腔アレルギー症候群(OAS)は、アレルギー症状が口腔咽頭から全身に波及し、まれにアナフィラキシーまで進展する現象として提唱されましたが、現在は、OASを花粉食物アレルギー症候群(Pollen food allergy syndrome; PFAS)と呼ぶようになりました。

■ OASのなかにPFASがあるので、わかりにくいところがありますが、論文のなかであるOASの発症年齢のピークが0歳であるというのはFAに合併しているといえ、PFASとは異なる病態でしょう。

■ アレルギー性鼻炎の発症が低年齢化している現状では、OAS(≒PFAS)も低年齢化する可能性があり、対応が求められ検討が試みられていますが、現状では有効な方法がありません。

 

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今日のまとめ!

 ✅ 10歳ごろをピークとしたOASの発症はアレルギー性鼻炎の発症とリンクしていると考えられる。

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