以下、論文紹介と解説です。

Morita S, et al. The clinical features and prognosis of mumps-associated hearing loss: a retrospective, multi-institutional investigation in Japan. Acta Otolaryngol 2017; 137:S44-s7.

1987年から2016年に、日本の19病院の耳鼻咽喉科でムンプス難聴と診断された患者67人の臨床的特徴を調査した。

結論

■ ムンプスによる難聴の大部分は、片側の高度感音難聴であり、治療に難渋する。

■ まれに両側性の完全な聴覚障害例では、人工内耳が音声認識に有効だった。

■ ムンプス難聴を予防するためには、ムンプス(おたふくかぜ)ワクチンの接種が推奨される。

 

目的

■ 本研究の目的は、ムンプス難聴の臨床的特徴を調査し、聴力結果を評価することだった。

 

対象および方法

■ 1987年から2016年に、19病院の耳鼻咽喉科でムンプス難聴と診断された患者を対象に、多施設共同レトロスペクティブ研究デザインのもと、臨床パラメータを分析した。

 

結果

■ ムンプスによる難聴患者67名が登録された。

■ 調査対象者は男性35人、女性32人であり、年齢は1歳から54歳、年齢中央値は9.5歳だった。

63人の患者が片側難聴で、4人が両側難聴だった

65人の耳に重度難聴が認められた。

論文から引用。

■ 重度難聴のうち、完全に回復したのは1耳のみだった。

管理人注
ムンプスによる難聴の大部分は片側性重症感音難聴で、ステロイド、血管拡張剤、ビタミンB12、高圧酸素療法などの治療に抵抗性でした。すなわち、ムンプスによる高度難聴は回復が望みにくいということです。
一方で軽症から中等症の難聴は自然回復する可能性があり、ムンプス難聴の一部は見落とされている可能性があるとしています。

 

論文から引用。

■ 両側難聴の4人は、人工内耳の手術を受けた。

■ ムンプス難聴患者のほとんどはワクチン接種の履歴がなかった。

 

 

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ムンプス(おたふくかぜ)ワクチンは、一時不足しており接種困難な状況になりましたが、10月末に出荷再開となりました。

■ ムンプス(おたふくかぜ)による高度難聴は回復困難であり、ほとんどはムンプスワクチン未接種者に起こります。

■ しかし、ムンプス(おたふくかぜ)ワクチンは、武田薬品のワクチンの供給が設備トラブルのため一時途絶えていたこともあり、接種が難しい状況でした。

 

■ そのムンプスワクチンが、10月末に出荷再開になりました。

武田薬品のおたふくワクチン25日に出荷再開…設備トラブルで一時停止、各地で接種休止相次ぐ

■ まだ流通量は十分ではありませんが、今のうちに接種するべきでしょう。

■ ちなみに、インフルエンザワクチンとムンプスワクチンは同時接種可能です。

 

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今日のまとめ!

 ✅ ムンプスは高度難聴を起こす可能性があり、その場合は回復する可能性は低い。

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