以下、論文紹介と解説です。
Fricke J, et al. Prevalence of chronic urticaria in children and adults across the globe: Systematic review with meta‐analysis. Allergy 2020; 75:423-32.
慢性じんま疹の有症率に対し、システマティックレビュー(18研究)、メタアナリシス(11研究)を実施した。
背景と目的
■ 蕁麻疹は頻度の高い皮膚疾患であるが、特に慢性蕁麻疹については、集団ベースの信頼性の高い有病率の推定値は十分判明していない。
■ 本研究の目的は、世界中の集団ベースの研究を評価することで、慢性蕁麻疹の有病率をシステマティックに評価しまとめることだった。
方法
■ 横断研究・コホート研究デザインの集団ベースの研究、健康保険/システムデータベースに基づく研究について、PUBMED・EMBASEに対しシステマティック検索を行った。
■ バイアスリスクは、有病率研究に特異的なツールを用いて評価した。
■ メタアナリシスにはランダム効果モデルを用いた。
結果
■ システマティックな評価として18研究、メタアナリシスに11研究が含まれ、86,000人以上の参加者のデータが含まれていた。
論文から引用。研究フローチャート。
■ バイアスリスクは中程度であったが、研究間の統計的不均一性(I2)は高かった。
■ アジアにおける研究を結合すると、ヨーロッパ(0.5%; 0.2~1.0)や北アメリカ(0.1%; 0.1~0.1)の研究に比較し、慢性蕁麻疹の点有病率が高かった(1.4%; 95%CI 0.5~2.9)。
論文から引用。世界の地域ごとの慢性蕁麻疹の点有病率。
論文から引用。慢性蕁麻疹の生涯有病率。
論文から引用。慢性蕁麻疹の点有病率。
■ 女性の方が男性よりもわずかに多く発症しており、15歳未満の児の有病率に性差は認められなかった。
論文から引用。慢性蕁麻疹の男女別点有病率。
■ 時間的傾向を調べた4研究では、慢性蕁麻疹の有病率は時間とともに増加していることが示された。
結論
■ 世界的に見て、慢性蕁麻疹の有病率は少なからず地域差があった。
■ 慢性蕁麻疹の有病率は、世界的に見ても地域差が大きく、特に小児と青年の有病率、慢性蕁麻疹のサブタイプ、潜在的なリスク因子と保護因子について、より性別に特化した集団ベースの標準化された国際的データを得る必要があると考えられる。
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バイアスは指摘されているものの、しばらくはこのメタアナリシスが慢性じんま疹の有症率の参考になると思われる。
■ 横断研究などが中心であり、前向き研究が少ないため、バイアスも多いのではないかと考察されていました。
■ とはいえ、慢性じんま疹はけっして少なくなく、アジア地域である日本でも決してすくなくはないと感じます。
■ 今後は、この報告を有病率も参考にしていきたいと考えています。
今日のまとめ!
✅ 慢性じんま疹の有症率は、欧米よりアジアの方が高く、男性より女性の方が多いと推定されている。
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