以下、論文紹介と解説です。

Kosilov KV, et al. Night diuresis stimulation increases efficiency of alarm intervention. Journal of Pediatric Urology 2015; 11:261.e1-.e5.

通常の方法でアラーム療法を導入した群141人と、アラーム療法と睡眠前の水分負荷を行った群153人を比較し、夜尿症の改善度を比較した。

はじめに

一次性単一症候性夜尿症(primary monosymptomatic nocturnal enuresis; PMNE)の有病率は1.6%から15%と言われている。

■ 夜尿症アラームを用いた治療は古くから行われているが、長期間の使用が必要であること、治療に抵抗を示す子どもの割合が高いことなど、多くの欠点がある。

■ そこでアラームシステムをより強く使用することで、尿意による覚醒に対する条件反射の形成過程が加速され、肯定的な結果が得られる患者の割合が増加するのではないかという仮説を立てた。

■ 水分摂取量が増えれば、覚醒の頻度が高くなるので、アラームシステムの使用頻度も高くなると考えられる(図)。

論文から引用。

 

目的

■ 就寝前の水分摂取量の増加が、アラーム療法の効果に及ぼす影響を調べること。

 

研究デザイン

■ 治療群は小児294人(男児178人)で構成され、平均年齢:11.3(9.1~11.9)歳だった。

■ 全員が過活動膀胱アンケート(overactive bladder questionnaire; OAB-q)と膀胱日誌を記入し、ウロフルメトリー、血液検査、尿検査を受けた。

■ A群(141人、平均年齢10.9(9.1-11.6)歳)は、もともとアラームシステムを使用していた(Wet Stop/BYE-WET、米国)。

■ В群(153人、平均年齢11.5(9.3-11.9)歳)は、水またはその他の透明で色のついていない液体(dm³あたりのミネラル分が1g以下のミネラルウォーター)のいずれかを、睡眠直前に1回、4-5ml/kgの量で飲んだ。

■ 治療の効果は、1週あたりの睡眠中の排尿エピソード、1週あたりの排尿欲求による自然覚醒エピソードの頻度の変化によって評価した。

■ データはJMP SAS Statistical Discovery 8.0.2を用いて解析した。

■ 群間の比較にはWilcoxon基準を用い、グループ内の変化の相関はSpearman係数を用いて分析した。

 

結果

アラーム療法終了2週間後のNEの完全消失は、A群34人(24%)、B群59人(39%)に認められ、この差は信頼水準95%で統計的に有意だった

 

考察

■ PubMedやScopusを含むデータベースを検索した結果、PMNE患者の水分摂取量の理想的な管理方法に関するエビデンスや推奨事項を提示した論文は見当たらなかった。

■ 水分摂取量の制限は一般的に推奨されているが、そのような水分制限を単独療法として行った場合に、乾眠回数の増加を示すエビデンスはない。

■ 一方、この研究では、水分摂取量の増加と夜尿アラーム療法を併用することでアウトカムが改善することが示された。

 

結論

■ 小児のPMNEの治療において、水分摂取量の増加がアラーム療法の介入効率を向上させることを証明された。

 

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夜尿症に対するオーバーラーニングは、新しいガイドラインにも紹介されています。

■ あくまでこの『オーバーラーニング』はアラーム療法に有効とされている方法で、デスモプレシン療法には適応できません。

■ 夜尿症ガイドライン2021には、アラーム療法が奏功し、中止をする前にオーバーラーニングをしておくと再燃がすくなくなることが紹介されています。

 

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今日のまとめ!

 ✅ アラーム療法時の『睡眠前の水分負荷』は、夜尿症における効果を上げるかもしれない。

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