以下、論文紹介と解説です。
Wambre ER, et al. Clinical and immunological evaluation of cat-allergic asthmatics living with or without a cat. Clinical & Experimental Allergy 2021; 51:1624-33.
ネコと暮らしている喘息患者 10人と、猫と暮らしていない喘息患者 9人を対象に、臨床的・免疫学的特徴(皮膚プリックテスト、スパイロメトリー、症状の評価、免疫学的マーカー)を比較した。
背景
■ 猫アレルギーの喘息患者で、ネコと暮らしている人(with cats; WC)とネコと暮らしていない人(withnot cat; WoC)における、日常的なネコとの接触が臨床的・免疫学的な影響を明らかにすることで、アレルギー反応の要因を理解する可能性がある。
方法
■ 喘息患者であるWC 10人とWoC 9人を対象に、臨床的・免疫学的特徴(皮膚プリックテスト、スパイロメトリー、症状評価、免疫学的マーカー)を比較した。
結果
■ WCは長時間作用型β刺激剤(p < 0.05)と高力価吸入ステロイド薬の使用が多かった。
■ 肺機能、鼻や眼の症状、喘息のコントロールについては、両群間に差は認められなかった。
■ ネコフケおよびFel d 1特異的IgG4抗体価は、WC群の方がWoC群よりも高かった(いずれもp < 0.05)。
■ 総IgE値とネコフケ、Fel d 1、Fel d 7特異的IgE濃度は同程度だったが、Fel d 4-特異的IgE抗体価はWoCよりもWCの方が高かった(p < 0.05)。
■ ネコフケ抽出物やFel d 1特異的好塩基性細胞の感度は、WoCに比較してWCは低く(p < 0.05)、IgG4抗体価の高さと相関していた(r = 0.63; p = 0.009)。
■ Fel d 1特異的CD4+T細胞反応は、WoCと比較してWCはTh2A反応に偏っていた。
■ Fel d 1特異的IgE抗体価はCRTH2やCD200R細胞表面発現と相関した(ともにp ≤ 0.05)。
結論
■ WCとWoCで見られた免疫学的な差異は、自然な猫との接触による臨床的耐性を反映していなかった。
■ アレルギーがあっても猫と暮らせるのは、予防薬の使用率が高いからかもしれない。
■ この研究は、アレルギー治療のための新しい治療法のデザインに役立つ可能性があります。
キーメッセージ
■ 猫と暮らしている猫アレルギーの喘息患者は、猫と暮らしていない猫アレルギーの喘息患者に比べて、症状を抑えるために必要な薬の量が有意に多い。
■ 猫と暮らしている人では、Fel d 1の刺激に対する好塩基球の感受性が低いが、これはアレルゲン特異的IgG4の血清濃度が高いことに起因すると考えられる。
■ Fel d 1特異的Th2A反応は、猫と同居している人の方が、そうでない人よりも高く、Fel d 1特異的IgE抗体価と相関している。
ペットアレルギーがあるうえで飼育を続けることを否定するわけではなく、アレルギーによる症状の悪化がおこりやすいことを承知した上で治療に向かっていく必然性性が上がるということを共通認識にする必要性があるということだろう。
■ 私は、この研究結果をもって、ペットの飼育をやめるようにお話したいわけではありません。
■ 多くの場合、ペットアレルギーがありつつ飼育を継続していても、『薬の助けをかりつつ』生活を続けることができることが多いとも言えるからです。
■ 一方で、ペットアレルギーが有る上でのペット飼育は、『喘息の薬を使う場面が増える』ことを患者さんに承知いただき共通認識にしておく必要性があると思います。
■ これはアトピー性皮膚炎などにも言えることで、薬の副作用がおこらないように、より丁寧な治療をすすめていく必然性があがると考えています。
今日のまとめ!
✅ ネコアレルギーのある喘息患者において、防御抗体であるIgG4抗体価の上昇があるものの、抗喘息薬の必要性はやはりあがる可能性が高い。
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