以下、論文紹介と解説です。

de Moira AP, et al. Associations of early-life pet ownership with asthma and allergic sensitization: a meta-analysis of >77,000 children from the EU Child Cohort Network. Journal of Allergy and Clinical Immunology 2022.

EUにおける9つの出生コホートから得られた5~11歳の母児77,434組のデータを用いて、ネコやイヌの飼育と喘息の関連を調査した。

背景

■ 乳幼児期のネコやイヌの飼育と小児喘息との関連を調べた研究では、結果が一貫していない。

■ これらの不一致は、ペットの種類、曝露の時期や程度など、いくつかの要因によって説明される。

 

目的

■ 乳幼児期のネコやイヌの飼育と学童期の喘息との関連について、種類(ネコvsイヌ)、飼育時期(飼育経験なし、出生前、幼少期)、飼育程度(数)の役割、アレルゲン感作の役割を含めて検討する。

 

方法

■ EU Child Cohort Networkにおける9つの出生コホートから得られた5~11歳の母児77,434組のデータを用いた。

■ DataSHIELDプラットフォームを用いて、調整済みロジスティック回帰モデルを用いて関連性を検討し、各コホートで個別に適合させ、ランダム効果メタアナリシスを用いて統合した。

 

結果

■ 乳幼児期ネコとイヌの飼育率はそれぞれ12~45%、7~47%であり、喘息の有病率は2~20%だった。

■ ネコやイヌの飼育と喘息に全体的として関連はなかった(OR 0.97 [95%CI 0.87-1.09] および0.92[0.85-1.01])。

■ 飼育の時期や程度も、関連性に強く影響しなかった。

■ また、ネコやイヌの飼育も、ネコやイヌ特異的なアレルゲン感作とは関連していなかった(OR 0.92 [0.75-1.13]、0.93 [0.57-1.54])

■ しかし、ネコとイヌに特異的なアレルゲン感作は、学童期の喘息と強く関連していた(OR 6.69 [4.91-9.10]、5.98 [3.14-11.36])

■ また、飼い主と感作には相互作用があることが示唆され、飼い主はペットの感作に関連したリスクを悪化させるものの、感作がない場合には喘息をある程度予防できることが示唆された。

結論

■ 今回の調査結果は、乳幼児期にネコやイヌを飼うこと自体が学童期の喘息のリスクを高めることを支持しないが、飼い主がネコやイヌ特異的アレルゲンに感作するリスクを悪化させる可能性があることを示唆している。

ペットの飼育に関しては、矛盾する研究結果が多く、患者さんからの質問にクリアカットに答えることが難しい。

■ Discussionにも記載されていることですが、喘息やアレルギーがある場合、ペットを飼うことを避けるという研究結果がありますので、バイアスになる可能性はあります。

■ しかし、感作にまで至っていない子どもならば、飼育が喘息をむしろある程度予防できる可能性もあるということです。これは先行研究とも一致します。

■ 一方で、今回の結果は、ネコやイヌに監査されている場合は学齢期には喘息のリスクを高め、このリスクはネコやイヌを飼っている児では大きくなることも示唆されます。

■ 個人的には、初診時にすでに飼育されている場合は、『ペットと共存を目指す、ただし薬剤を十分に減量できない場合があることを理解いただく』、感作されていないお子さんで年齢を長じた場合で『どうしても新規に飼いたい』場合は飼育も考慮できる、一方ですでに感作されている場合は、できれば新規には飼育を勧めないという方針です。これが正しいかどうかははっきり言うことは困難ですが…

 

 

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