以下、論文紹介と解説です。

Saeki H, Ito K, Yokota D, Tsubouchi H. Difamilast ointment in adult patients with atopic dermatitis: A phase 3 randomized, double-blind, vehicle-controlled trial. Journal of the American Academy of Dermatology 2022; 86:607-14.

日本人の成人アトピー性皮膚炎患者364人に対し、ジファミラスト(モイゼルト)軟膏群と基剤群にランダム化し、4週間の効果と安全性を比較した。

背景

■ ジファミラストは、選択的ホスホジエステラーゼ4阻害剤である。

■ ホスホジエステラーゼ4は、アトピー性皮膚炎を含む炎症性疾患のサイトカイン産生に関与している。

 

目的

■ 日本人の成人アトピー性皮膚炎患者を対象に、ジファミラスト軟膏 1%の基剤に対する優越性を検証する。

 

方法

■ 第3フェーズランダム化二重盲検試験において、investigator global assessment(IGA)スコアが2または3の15~70歳の患者に、1日2回、ジファミラスト1%軟膏(n=182)または基剤(n=182)を4週間投与した。

 

結果

■ 4週目(主要評価項目)のIGAスコアの達成率(IGAスコア0または1を達成し、2段階以上の改善を示した患者の割合)は、ジファミラスト1%軟膏は、基剤より有意に高かった(それぞれ38.46% vs 12.64%, P < 0.0001)。

■ 4週目のEASI総合スコアが50%以上、75%以上、90%以上改善する達成率も同じ傾向だった。

論文から引用。EASIスコアの変化率。

■ ジファミラスト1%軟膏は、1週目から4週目まで、試験開始からのEASIスコアの平均改善率が、基剤に対して有意だった。

■ 治療上問題となる有害事象は、ほとんどが軽症または中等症であり、ジファミラストの使用頻度は少なかった。

論文より引用。安全性は基剤と比較しても有害事象が少ない。

 

制限事項

■ 本試験の治療期間は4週間に限定されている。

 

結論

■ ジファミラスト1%軟膏は、日本人の成人アトピー性皮膚炎患者を対象とし、基剤に対する優越性と良好な安全性を示した。

 

■ PDE4阻害薬の外用薬は、先行しているタクロリムス(プロトピック)軟膏やデルゴシチニブ(コレクチム)軟膏に比較し、使用量の上限がないことや安全性の高さがアドバンテージと考えられます。

■ 一方で、ジファミラストは現状では2歳以上での使用が想定されているので、できれば2歳未満で使用できるようになることが望まれます。

■ とくに、顔の湿疹などは乳児期に難重する場合もありますし、『アトピーマーチの予防』として活用されればいいのではないかと個人的には考えたりもしています。

 

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