以下、論文紹介と解説です。

Van Boven FE, et al. Effectiveness of the air purification strategies for the treatment of allergic asthma: a meta-analysis. International archives of allergy and immunology 2020; 181:395-402.

アレルギー性喘息に対する空気清浄機の有効性に関し、10試験のメタアナリシスを実施した。

背景

■ McDonaldらが発表したメタアナリシス[Chest 2002; 122; 1535-1542]を更新し、家庭内のアレルゲン(ダニ、犬、猫、ゴキブリ)に関連アレルギー性喘息の治療に対する空気清浄の有効性について検討した。

 

方法

■ McDonaldらによる試験と、2000年以降に発表された試験を分析した。

論文から引用。研究フローチャート。

■ 喘息症状スコア(asthma symptoms scores; ASS)、投薬、予測1秒量に対する%(forced expiratory volume in 1 s as a percentage of the predicted value; FEV1 %pred)、FEV1の20%の低下を引き起こすヒスタミン濃度(histamine provocative concentration causing a 20% reduction in FEV1; PC20)、喘息QOL質問票(Asthma Quality of Life Questionnaire; AQLQ)スコア、呼気一酸化窒素(fractional exhaled nitric oxide; FeNO)に関するデータが抽出された。

■ 有効性はmetafor(Prospero CRD42019127227に登録)を用いて検討した。

 

結果

■ 計482人を含む10試験(試験開始時の特性:平均FEV1 %pred 83.2%, I2 = 96.7%; 平均PC20 4.93 mg/mL, I2 = 44.0%; 平均AQLQ 4.67 [max.7], I2 = 93.7%; 平均FeNO 36.5 ppb, I2 = 0%)を対象とした。

論文から引用。小児に対する研究は2研究のみ。

■ AQLQスコアの平均差は+0.36(95%CI 0.10~0.62, p = 0.01, n = 302, I2 = 0%)、FeNO値は-6.67ppb(95%CI -10.56~-2.77, p = 0.0008, n = 304, I2 = 0%)と評価された。

■ 他のすべてのアウトカムにおける標準化平均差は有意ではなかった(ASS –0.68, p = 0.20; 投薬: –0.01, p = 0.94; FEV1 %pred –0.11, p = 0.34; PC20 +0.24, p = 0.53).。

論文から引用。投薬に有意差なし。

 

論文から引用。FEV1%predに有意差なし。

■ 試験開始時に軽症から中等症の喘息が主体であった患者において、AQLQスコアとFeNO値の平均値に統計的に有意な差があった。

論文より引用。FeNOに有意差あり。

■ 大規模臨床試験では、GINA(Global Initiative for Asthma)ステップ4の治療を受けた患者のサブグループでは、有意な改善が見られたと報告されている。

 

結論

■ 今後、空気清浄機に関する研究では、重症でコントロール不良のアレルギー性喘息患者に焦点を当てることを推奨される。

空気清浄機は、重症のアレルギー性喘息患者においては有効かもしれない。

■ 環境整備に関しては、相反する研究結果が多いのですが、『汚染されたことがわかっている場合に』『複数の方法で介入すると』改善に働いてくると考えるのが妥当な感じがします。

■ そして、今回のように『重症度が高い』場合にも有効性が上がるというといえそうです。

■ なお、感作そのものが皮膚バリアも低下させ、他のアレルゲンにも感作されやすくなる…という報告が増えてきていることから、年齢が低いうちに感作を勧めにくくするような対策が必要なのではと思えますが、これという方法がないのが現状ともいえそうです。

 

 

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