以下、論文紹介と解説です。

Jones SM, et al. Efficacy and safety of oral immunotherapy in children aged 1-3 years with peanut allergy (the Immune Tolerance Network IMPACT trial): a randomised placebo-controlled study. Lancet 2022; 399:359-71.

500 mg以下のピーナッツ蛋白質の負荷試験で陽性であった生後12ヶ月から48ヶ月未満の小児に対し、ピーナッツ経口免疫療法を134週間おこなった。

背景

■ ピーナッツアレルギーの幼児は、食物除去が現在の標準的な治療法である。

■ そこで、ピーナッツ経口免疫療法が、この集団において脱感作(アレルギー反応の閾値が上昇すること)または寛解(免疫療法を中止した後に反応しない状態になること)を誘発するかどうかを評価した。

 

方法

■ 米国の5つの大学病院で、ランダム化二重盲検プラセボ対照試験を行った。

■ 対象となるのは、二重盲検プラセボ対照食物負荷試験(double-blind, placebo-controlled food challenge; DBPCFC)において,500 mg以下のピーナッツタンパク質に反応した生後12ヶ月から48ヶ月未満の小児だった。

■ 参加者は、コンピュータを用いてピーナッツ経口免疫療法を受ける群とプラセボを受ける群(134週間(ピーナッツタンパク質2000mg/日)投与した後、26週間の除去する群)に2対1の割合でランダム化し、参加者と研究スタッフ、治験責任者は治療群の割り付けをマスキングされた。

管理人注
経口免疫療法のプロトコルは、4つのフェーズで構成
第1フェーズ:初期用量漸増(0.1mgから6.0mg)
第2フェーズ:2週間ごと(0週から約30週)に最大目標量の2000mg(最低用量250mg)まで漸増
第3フェーズ:維持(30-134週)
第4フェーズ:経口免疫療法を中止(134-160週)

■ 主要評価項目は、治療終了時(134週目)の脱感作、重要な副次的評価項目である除去後の耐性維持(160週目)は、intention-to-treat集団においてDBPCFCで5000mgで評価した。

■ 安全性および免疫学的パラメータは、同じ集団で評価した。

■ 本試験はClinicalTrials.gov, NCT03345160に登録されている。

 

結果

■ 2013年8月13日から2015年10月1日に、年齢中央値39.3ヶ月(IQR 30.8-44.7)の小児146人を、ピーナッツ経口免疫療法(96人)またはプラセボ(50人)にランダム化した。

134週目に、ピーナッツ経口免疫療法を受けた96人のうち68人(71%; 95%CI 61-80)が、プラセボを受けた50人のうち1人(2%; 0.05-11)と比較して、脱感作という主要アウトカムを達成した(リスク差[RD]69%; 95%CI 59-79; p<0.0001)

■ 134 週目におけるDBPCFC の累積耐容量の中央値は、ピーナッツ経口免疫療法群が 5005 mg(IQR 3755-5005)であったのに対し、プラセボ群は 5 mg(0-105)だった(p<0.0001).

■ 除去後、耐性基準を満たしたのは、ピーナッツ経口免疫療法を受けた96人中20人(21%; 95%CI 13-30)に対し、プラセボを受けた50人名中1人(2%; 0-05-11)だった(RD 19%; 95%CI 10-28; p=0.0021)

■ 160週目のDBPCFCにおける累積耐容量の中央値は、ピーナッツ経口免疫療法が755mg(IQR 0-2755)、プラセボが0mg(0-55)だった(p<0.0001)。

■ 134週目に5000mgのDBPCFCをクリアしたピーナッツ経口免疫療法群の参加者のうち、かなりの割合が160週目には5000mgに耐えられなくなっていた(p<0.001)。

■ 134週目に減感作されていたプラセボ群の参加者は160週目にも耐性を示した。

■ プラセボ群と比較して、ピーナッツ経口免疫療法群は134週目と160週目に、ピーナッツ特異的IgEとAra h2特異的IgE、皮膚プリックテスト、好塩基球活性化が低下し、ピーナッツ特異的IgG4とAra h2特異的IgG4が増加した。

■ ピーナッツ経口免疫療法を受けた参加者を対象とした多変量回帰分析では、年齢が低く、試験開始時ピーナッツ特異的IgE抗体価が低いことが寛解の予測因子となった

■ 大多数の参加者(ピーナッツ経口免疫療法を受けた98%、プラセボを受けた80%)が、経口免疫療法中に少なくとも1回の摂取時のアレルギー反応を経験し、主に軽症から中等症で、ピーナッツ経口免疫療法を受けた参加者ではより頻繁に発生した。

■ ピーナッツ経口免疫療法を受けた21人において、中等症の症状を伴う経口免疫療法時35件のアレルギー反応がアドレナリンで治療された。

 

解釈

■ ピーナッツアレルギーを持つ小児において、4歳前にピーナッツ経口免疫療法を開始することは、脱感作と寛解の両方の増加と関連した。
耐性の進展は免疫学的バイオマーカーと相関していた。

■ これらの結果は、ピーナッツアレルギーの耐性を誘導する介入を行うための、若年層における機会の窓があることを示唆している。

年齢が低いうちに、特異的IgE抗体価が高くなる前に治療介入するほうが、より有効といえそうだ。

■ ピーナッツ蛋白量500mg未満ということは、ピーナッツ2粒未満で症状があるということになります。

■ そして維持量としての目標量はタンパク量2000mgですので約8粒、最低量は250mg、すなわち1粒程度となります。

■ およそ3年間の治療で71%が食べられるようになったものの、半年程度中断すると21%まで下がってしまうという結果です。

■ さらに、治療の有効性に関しては、ピーナッツ特異的IgE抗体価がひくく年齢が低いほど成功率が高いと言えます。

■ ここでも浮き彫りになってくるのは、年齢が低いうちに始めたほうがよく、さらには感作をいかにすすめないかという点でしょう。

 

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