以下、論文紹介と解説です。
Guttman-Yassky E, et al. Phase 2a randomized clinical trial of dupilumab (anti-IL-4Rα) for alopecia areata patients. Allergy 2022; 77:897-906.
アトピー性皮膚炎を合併している円形脱毛症患者+合併していない円形脱毛症患者を、40人にデュピルマブ300 mg毎週、20人にプラセボ毎週を24週間皮下投与し、その後さらに24週間のデュピルマブを継続投与した。
背景
■ 頭皮が広範囲に脱毛している円形脱毛症(alopecia areata; AA)に対する治療法は限られており、最近では、AAにおける2型T細胞(type 2 T-cell;Th2)免疫反応の役割を裏付ける証拠が得られている。
■ アトピー性皮膚炎を含む2型疾患に承認されているTh2シグナルを阻害するモノクローナル抗体であるデュピルマブについて、AA患者を対象に評価した。
方法
■ アトピー性皮膚炎を合併している円形脱毛症患者と合併していない円形脱毛症患者を2対1にランダム化、デュピルマブ 300 mg毎週またはプラセボ毎週を24週間皮下投与し、その後さらに24週間のデュピルマブ非盲検期を設けた。
■ 主要評価項目は、24週目のSALT(Severity of Alopecia Tool)スコアのベースラインからの変化で、副次的評価項目には発毛に関するさまざまな尺度が含まれた。
結果
■ デュピルマブ群には40人、プラセボ群には20人の患者が割り付けられた。
■ 24週目にプラセボ群では疾患の悪化が認められ、SALTスコアの最小二乗平均変化は-6.5(95%信頼区間[CI]-10.4~-2.6)だったのに対し、デュピルマブ群では2.2(95%CI、-0.6~4.94)変化した(p<0.05)。
■ デュピルマブ投与48週後、SALT30/SALT50/SALT75の改善を達成した患者はそれぞれ32.5%、22.5%、15%であり、ベースラインのIgEが200IU/ml以上の患者の奏効率はそれぞれ53.8%、46.2%、38.5%に増加した。
■ さらに、試験開始時のIgEは83%の精度で治療効果を予測した。
■ 安全性に関する新たなシグナルは検出されなかった。
結論
■ この仮説に基づいた試験は、AA患者におけるTh2軸とTh2をターゲットの病因的役割の可能性を示した最初のものである。
■ ベースラインの血清 IgE値に基づく患者選択が治療結果を改善する可能性があった(Clinicaltrials.gov 番号、NCT03359356)。
今後、円形脱毛症に対するデュピルマブの保険適用拡大が期待できるかもしれない。
■ 昨年の小児アレルギー学会でのYear in reviewで、円形脱毛症とデュピルマブの関連性の話をしたあと、『初めて知りました』というコメントを会場からいただきました。
■ このあたりのテーマはJAK阻害薬でも報告が増えています(J Eur Acad Dermatol Venereol 2019; 33:850-6.)。
■ ただし、この効果はTh2に傾いた方に有効らしいということが、今回の報告からも明らかになりつつあり、しかも週1回で長期間…というと、コストパフォーマンスにも配慮が必要でしょう。
■ この研究ではベースラインの総IgE値がデュピルマブの円形脱毛症への効果を83%の精度で予測することができ、総IgE値≧200IU/mlの患者において、48週目に薬剤群でSALT30達成率53.8%、SALT50達成率46.2%、SALT75達成率は38.5%となっていました。
■ もちろん、現状ではデュピルマブの円形脱毛症への保険適用はありませんが、今後、保険適用が拡大が期待できるかもしれません。
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